第四百六十六話
ベルウッド学園中等部の卒業式は恙無く執り行われ不測の事態など起きずに終了した。殆どの卒業生はそのまま高等部に上がるので、別れという認識が薄い為か淡々としていた。
その翌日は舞の終業式だ。両親と共に迎えに行ったのだが、現在の俺は女子中学生に囲まれて写真を撮られている。
「舞、これがしたかったの?」
「うん、最後にお姉ちゃんとお揃いで写真撮りたかった!」
舞がお姉ちゃん呼びをしている事から察して貰えたと思うが、俺は女性体を発動しベルウッド学園の制服に身を包んでいる。
昨夜にされた舞からのお願いを断れなかった為こうなったのだが、校舎をバックに二人で写真を撮っていたら舞のクラスメートや他の女子生徒も集まりだしてしまった。
「滝本先輩、ご卒業おめでとうございます。制服似合ってます!」
「欲を言えば、その制服を着た男の娘の先輩も見たかったわ」
記念撮影の後、卒業の祝と謎の後悔を皆から言われ一年間を過ごしたベルウッド学園を後にした。
記念撮影にはちゃっかりと鈴木さんも加わっていて「舞さんまで転校なんて!」と恨み言を言われたが、切っ掛けは父さんを嵌めた連中なのでヘイトはそちらにお願いしたい。
皆で情報部に戻り、俺は鈴置中将と関中佐に連れられて人事部に顔を出す。士官学校入学の前に正式に軍人として任官されるのだ。
「滝本優准尉相当官、貴官を大日本帝国陸軍中尉に任命し、情報部に配属するものとする。尚、士官学校予科に在籍する事となるが、任務を優先するものとする」
「滝本准尉相当官、謹んで拝命致します」
人事部長による任官が終わり、新たな軍服と階級章を受け取った。これで俺は正式に大日本帝国陸軍所属の軍人となった。
「中佐殿、いきなり中尉に任官された理由をお聞きしても?」
軍属の時のまま准尉に任官は無いだろうとは思っていた。しかし、少尉に昇進しての任官だと思っていたのでその上の中尉に任官されるとは予想外だった。
「元々中尉は少なくとも少尉相当の能力はあると認知されていた。しかし軍属なので准尉相当官としていた訳だ。予定では正式な軍人となったタイミングで少尉に任官するとなっていたが、色々と功績が重なったのでな」
「ロシア皇帝父娘の救出に潜水艦所属先問題の解決。皇居ダンジョン探索における三十二階層到達への貢献もあり、今回の件も陸軍に有利な点が多々ある。これで昇進に反対する奴が居たら、そいつが昇進するにはどれだけの功績が必要になるかな」
父さんの件に関しては俺の功績とは違うのではないかと思う。だけど、他の件に関しては納得するしかない。
「任官された以上、その階級に相応しい働きはするつもりです」
「今でも充分中尉に相応しい働きを・・・いや、まだ階級が足りないな」
評価してくれるのは嬉しいが、ロシア皇家の事件のような事は早々無いだろうから目に見える活躍をするのは難しいだろうな。まあ、ダンジョン探索を頑張って報いよう。




