第四百六十一話
迷い家産の海鮮を使ったバーベキュー大会を情報部の人達と楽しみ、母さんと舞に満足するまで尻尾をモフられた翌日。朝から部員さんが潜ったところ、昨日と同様大量の魚貝類を確認出来たと報告された。
試しに捕獲してもらい迷い家を無人状態で閉じて再度潜って貰うと、また同じ場所でホタテや牡蠣や伊勢海老達が捕獲出来た。
「無限湧きですか。市場で迷い家を開いたら新鮮な海産を売り放題ですね」
「やろうと思えば出来てしまうのぅ。漁師や運送会社の仕事を取る事になる故やらぬがな」
呆れた様子の関中佐に半ば現実逃避しながら答える。市場から徒歩ゼロ分の漁場なんて反則でしょう。
無限湧きといえども日本の需要を満たせるなんて思わない。だが、値崩れを起こしたり商売が立ち行かなくなる人は出るだろう。俺はそんな事を望まない。
「凶作の年にお米を卸してもらうというのはアリですか?」
「産地表示をどうするのじゃ。迷い家産と表記するのじゃろうが、それは何処だと突っ込まれるぞえ」
国家の機関である陸軍が産地偽装したお米を販売するなんて論外だ。まあ、それを言ったら陸軍がお米を卸す事自体が異常なんだけど。
「獲物は一通り食品検査に回して問題無いとお墨付きを取っておけ。産地は言わなくて良い。今なら何も聞かずにやるだろう」
「食品検査の管轄は厚生労働省じゃったな。今陸軍から依頼が来たら何も聞かぬじゃろうなぁ」
不審な点があろうとも、陸軍軍属の身内に対してやらかし陛下のご不興を買っている今ならば省内規則を多少無視する位はやるだろう。
そこを突いて海産物の出処を秘匿したまま食材として問題ないかの検査をやらせるとは、関中佐の手腕には学ばなければならない所が多いと改めて思わされる。
「では、検査の依頼と厚生労働省の調査に行ってきます」
「仕事を増やした妾が言うのもなんじゃが、適度に休憩を取るのじゃぞ」
朝から海の調査を行い、次は厚生労働省の調査と部員さんの負担が大きくなっている。朝食を食べる時に休めたとはいえ、疲労は溜まっている筈だ。
「ご配慮いただき、ありがとうございます。言い方が悪いかもですが、海の調査は楽しめましたので半分娯楽のような物でした」
「それならば良いのじゃが・・・決して無理はせぬようにな」
「ありがとうございます。無理はしない範囲で職務に励む所存です!」
ああは言ったものの、無理しそうなテンションだから心配だな。部員さん達は定期的に父さんに診察をしてもらうよう中佐に頼もうか。
「あれだけ元気ならば、代休はまだ先で良さそうだな」
「・・・できるだけ早く父さんの診察を受けさせた方が良さそうじゃな。絶対何人か過労になっておるじゃろ」
中佐の呟きを聞いた俺は早急に健康診断をしなくてはならないと強く思った。俺が仕事を増やしてしまった以上、出来るだけフォローはしないとね。




