第四十六話
『ダンジョン、それは富を生み出すフロンティア。そして、法の規制が届かぬ無法の地』
リビングで四人揃ってテレビを見る。画面の中ではダンジョンの説明を行っていた。数々の地形にモンスター映し出され、ナレーションが解説していく。
『現在我々の社会を支えるエネルギー、魔石。それを得る唯一の手段であるダンジョンは必要不可欠な存在。しかし、ダンジョンが齎すのは恩恵ばかりでは無かった』
「うわぁ、凄いモンスターの数!」
「一面の荒野だけど、どこだろう?外国だよな?」
映し出された映像に舞が叫び、俺も思わず呟く。荒野を埋め尽くすモンスターが移動している。アメリカかロシア辺りの氾濫だろうか。
「外国では氾濫は珍しくないからなぁ」
「帝国ではほぼ無いものね。本当に帝国に生まれて良かったわ」
広大な国土を持っていたロシアやアメリカは発生したダンジョンも多く、未だ全てのダンジョンの制圧を完了させていない。日本帝国は国土の狭さと軍が刀を所持していた為早期に完全な鎮圧が出来たのだ。
『命を懸けて魔石やレア素材を持ち帰る探索者達。彼等はモンスターを退治するエキスパート達である。しかし、彼らの敵はモンスターだけではないのだ』
そこからは現在ダンジョンで起こっている問題が紹介されていった。法の監視が届きにくいダンジョンで行われてきた数々の蛮行。
『トラブルの裁定は当事者の証言が基になる。しかし、それを裏付ける証拠が無い為判断は難しくなってしまう。今回、我々はダンジョンで起きたトラブルの様子を記録した資料の入手に成功しました』
「あっ、お兄ちゃんだ!」
「優、格好いいじゃないか」
籠手を装備した華奢な探索者を怒鳴りつけるオッサンが画面に映る。言うまでもなく怒鳴られているのは俺である。
『探索者の少年、探索者の少年を怒鳴っているのは撮影者の仲間で、レアモンスターのレアドロップを取るという企画を撮影している配信者でした』
「何故にそこを二回繰り返すかな?」
「誤解されないように必要な処置だったんでしょ」
俺の疑問に対して即答する舞。両親も同意するように首肯している。どうやらこの場に味方は存在しないようだ。俺、泣いて良いかな?
『見つけたレアモンスターに逃げられた二人は追った先で彼に遭遇、彼が獲物を横取りする横殴りを行ったと主張し賠償と称して現金を要求しました』
「優、この下に映ってるのがそのレアモンスターなのか?」
「そうだよ。俺は飛んできた黄金虫を払っただけで倒してもいなかったんだ」
父さんの質問に答える間にも番組は進む。騒ぎを聞きつけたギルド監視員が到着し、同行を求めた所で録画は終わった。
『この後三人はギルドにて事情聴取を行ない、この録画が決め手となって少年の無実が証明されました。今回の事例では録画がありましたが、これは稀有な例なのです』
その後ダンジョンにおける犯罪行為の記録手段の確立が必要になるだろうと結論し、番組は終了した。
「優ちゃん、可愛く撮れていたわね」
「うん、THKは良い仕事をした」
着眼点が可笑しいが、両親共に番組には満足しているようだった。
「お兄ちゃんへのスカウトが何件来るか楽しみね!」
舞の発言にそんな事あるかと軽く考えていた俺だったが、翌日には頭を痛める事となるのであった。
 




