第四百五十八話
「そろそろ時間だな。俺は優君達と舞ちゃんを迎えに行ってくる。お前らは厚生労働省と医師会の調査準備をしてくれ。それと迷い家の海の調査に必要な物資の調達も頼む」
俺は両親と共に軍の車を借りて舞を迎えに行く事となった。運転は忙しい中を関中佐が引き受けてくれた。
「中佐、お忙しいのにありがとうございます」
「ベルウッド学園の学園長に言わなければならない事もあるから、これも仕事の内ですよ」
車は渋滞に嵌る事もなく順調に走りベルウッド学園に到着した。両親と関中佐は学園長室に向かい、俺は舞を迎えに一年生の教室に向かった。
「おっ、おい。あの美少女は誰なんだ?」
「すっげぇ、黒ゴスが似合いすぎ!」
しまった、皇居から戻った後着せ替え人形も使ってないし女性体も切っていなかったから黒ゴスのままだった。
こんな衣装で学園内を歩いていては無駄に注目を集めてしまうが、今更衣装を変えても更に注目されるだけのような気がする。
「舞、お待たせ」
「あっ、お姉ちゃん。ゴスロリ似合ってるよ!」
抱き着いてきた舞を勢いを殺して抱きとめる。この衣装、防御力は高い筈なのだけど柔らかいという不思議素材なのだ。
「えっと、優先輩、ですよね?」
「ああ、女性体だから分からないか。舞の兄、滝本優ですよ。舞がいつもお世話になってるわね」
笑みを浮かべて応えると、話しかけてきた少女は顔を赤らめて慌てだした。
「舞ちゃんから女の人にもなれると聞いていて、でも、お姉さんがすっごく綺麗で・・・」
「ちょっと落ち着いて深呼吸しようか。はい、吸って、吐いて」
半ば混乱していた少女は深呼吸をして落ち着いたようだ。顔は赤いままだったが普通に話しかけてきた。
「すいません、生で見たお姉さんが綺麗すぎて混乱しちゃいました。その衣装、陛下との謁見で着用されていた物ですよね?」
「うん、着替えるのを忘れてしまってね。学園に来るのだから制服で来るべきだったのだけど」
俺もここの生徒なのだから、男の姿で制服着用して来るのが最適解だったのだ。俺も平静を保てていないという事なのだろうな。
「そんな事無いよお姉ちゃん、だって目の保養になったから!」
「舞、見た目は女性でも中身は男子中学生だぞ。そんな奴のゴスロリ姿なんて誰得なんだよ?」
「「「「「「「俺(私)得です!」」」」」」」
舞のクラスメートから声を揃えて即答されてしまった。こんなに綺麗にハモるなんて、こんな状況を想定して練習でもしてたのか?
「と、兎に角関中佐と父さんと母さんが学園長室に居るから合流しよう」
「うん。それじゃあ皆、また明日!」
当然のように腕に抱き着いてきた舞と共に学園長室に向かう。注目されるし微妙に歩き難いのだが、離れてくれと言っても離れないだろうからそのまま歩いた。
「舞、学園でも話題になっていたか?」
「勿論。今日はずっとあの話題ばかりだったよ」
下らない企みを立てた奴らに隠蔽させず反撃の切っ掛けにするという目標は達成したみたいだけど、ちょっと効果があり過ぎたかな?




