第四百五十二話
「鈴置中将、関中佐、滝本准尉。会見後に詳しい話を聞きたい」
「はっ、御心のままに」
謁見の予定時間が過ぎ、陛下は退出していった。この後は俺達に対して記者会見が行われる予定となっており、その為に用意された部屋に移動する事となった。
マスコミ各社の記者が寿司詰め状態になった部屋で鈴置中将と関中佐、冬馬パーティーと俺が横並びになり席についた。
「では、これより皇居ダンジョン攻略部隊帰還会見を行います」
「陸軍情報部付き冬馬パーティーは皇居ダンジョンの間引き任務を実施、三十二階層まで潜りスリープシープの討伐に成功した事を改めて報告致します」
司会役の宮内省職員が記者会見の開始を宣言する。続いて冬馬伍長が二十階層にキャンプを張った事、俺が一人で維持し三人が更に潜って行った事を説明した。
簡潔な説明が終わり司会者が質問を受け付けると宣言すると、記者からは一斉に質問を求める手が上がった。
「スポーツ伯耆です。滝本准尉のみ軍服ではなくドレスを着用されていますが、その理由をお聞かせ願いたい」
司会役に指名された記者が起立して質問してきたのだが、まず聞くのがそれかと気が抜けてしまった。まあ、確かに俺だけゴスロリだから気にはなるのだろうけど、それで良いのかスポーツ伯耆。
「これは今回のダンジョン探索において宝箱より発見された防具です。陛下がこれを着用しての謁見を望まれた為このような仕儀と相成りました」
「陛下のご要望だったのですね。ありがとうございました」
肝心の陛下は衣装に言及する前に爆弾発言をされたのでそちらに気が回らなかったみたいだけどね。スポーツ伯耆の記者が座り、次に質問しようと記者達が手を挙げる。
「半径新聞です。三十二階層まで到達されたそうですが、その証明をお願いします」
「ステータスオープン。これが証拠です。納得して頂けましたか?」
本当に三十二階層に行ったのかと疑う失礼な質問に対し、冬馬伍長がステータス画面を開き到達階層の記録を見せる。これは偽装しようがないので、完全な証拠と言える。
その後も質問が続いた。スリープシープをどうやって倒したかという質問には詳しくは黙秘すると濁し、俺がどうやって一人でキャンプを維持したのかという質問にはスキルを活用したとだけ答えた。
スキルについてどこまで公開するかは個人次第なので、嫌がる者に対してしつこくスキルを探るような言動は非難の対象となる。
そしてテレビ皇京によるスリープシープの魔石は公開されるのか、という質問が来たのに応じて宮内省の職員が魔石と羊毛を持ってきた。
マスコミはまさかレアドロップまで入手していたとは思っていなかったようで、それを見た瞬間に小さくないざわめきが起きた。
「そ、それはスリープシープのレアドロップなのでしょうか?」
「はい、これがスリープシープがドロップした羊毛です」
本来一社一つの質問だったのだが、冬馬伍長はテレビ皇京の二つ目の質問にも即座に答えざわめきが大きくなる。
この瞬間にモンスター素材を扱う企業は挙って宮内省と陸軍に問い合わせを行い、二つの組織は一時的に電話が繋がらなくなってしまったのだった。




