第四百五十話
翌朝、迎えに来た黒塗りの車に乗り込み皇居に向かう。車内には鈴置中将が乗っていて、エスコート役をしてくれるそうだ。
マスコミには皇居ダンジョン攻略を行った部隊が陛下に謁見し、その後重大な事項を発表すると伝えてあるそうだ。その為皇居に到着する時には前回のように報道陣が居座っていると思われる。
「昨日改めて関から話を聞きましたが、厚生労働省は何を考えているのでしょうか。そんな理不尽な事をすれば反発するだけと何故思わないのか・・・」
「権力で押さえつければ言いなりになるとでも思っているのでしょう。ですが、私も父さんもそんな連中の言いなりになって増長させる気は毛頭ありません」
幸い、日本医師会と厚生労働省を敵に回しても対抗出来る伝手と力があった。ここで泣き寝入りせず反撃すれば同じような被害者を出さずに済むと思いたい。
皇居に到着すると、以前と同様マスコミのカメラが列を成して待ち受けていた。俺達が乗る車が到着すると一斉にフラッシュが焚かれる。
「もう一台到着しました。軍の広報によりますと、皇居ダンジョンに潜ったパーティーをサポートした軍属の准尉が鈴置中将と共に乗っているとの事です。あっ、降りてきました!」
鈴置中将が先に降り、続いて降りた俺に手を差し出す。俺はその手を取って車から降りるとマスコミの対して微笑んだ。
「鈴置中将にエスコートされ、美しい少女が降りました。あっ、今届いた情報によりますと、少女は以前ロシア皇帝陛下をお救いした滝本准尉だそうです」
レポーターの言葉に周囲のマスコミがざわめく。俺が女性体というスキルを持っている事は少し調べれば分かる事だが、この姿をマスコミに晒したのは初めてなので同一人物と知り驚いたようだ。
マスコミに見送られ、鈴置中将と共に待機していた侍従さんに案内されて控えの間にはいる。そこには軍服を着た冬馬パーティーの三人と関中佐が待っていた。
「優ちゃん可愛い!」
「私達じゃ着こなせないわね」
「ダンジョン、優ちゃんに着せる為に置いたのでは?」
俺を見るなり取り囲み、口々に褒めてくれる三人娘。あの宝箱がいつからあったのかは知らないが、俺に着せる為というのは無いだろ。
「優ちゃん、関中佐が謁見と記者会見で何があっても動じるなと言うのだけど。一体何があったの?」
「お話したい所ですが、長くなりそうなので・・・」
「準備が整いました。皆さま、こちらにお願いします」
関中佐は父さんの事や仕返しの事を三人娘に言っていないらしい。事前に伝えた方が、と思ったが時間がない。実際、すぐに侍従が呼びに来てしまった。
「こちら皇居内の謁見の間です。陸軍のパーティーが皇居ダンジョン攻略からの帰還報告を陛下に言上されるという事です。あっ、入ってきました」
侍従が開いた扉を、関中佐に続いて三人娘が入る。俺が入室すると軽いざわめきが起こり、最後に鈴置中将が入って扉が閉じられた。
男性二人に女性四人という構成だが、俺以外の五人は軍服を着用している。軍人なのだからそれが当たり前だ。ゴスロリを着ている俺が注目されても仕方ない。
「天皇陛下が入室されます」
侍従長の宣言の後、扉が開く。俺達は膝をつき陛下の入室を待った。




