第四十五話
複式学級では違和感があるとの複数のご意見を頂いた為、複式学級を支援級に変更致しました。
作者は昭和の体験を基に執筆しているため、時代にそぐわない描写もあるかと思います。
そういった違和感などは容赦なくツッコミを入れて下さると有り難いです。
「お兄ちゃん、待って!」
「ほらほら、ちゃんと待ってるから慌てるな」
翌朝登校しようと玄関に行くと舞が慌てて追いかけてくる。大きくなったと思っていたが、こういう姿を見るとまだまだ子供だとほっこりしてしまう。
「そういえば、お兄ちゃんが出る番組今夜放送じゃない?」
「そうなのかな?見るつもり無かったから聞かなかったんだよなぁ」
自分がトラブルに遭っている姿を見て楽しめるとは思わない。だから放送日時を敢えて聞かなかったのだが、舞はチェックしていたようだ。
「お兄ちゃんの記念すべき全国デビュー、見ない訳にはいかないわよ!」
「いや、因縁つけられてる姿を流されるだけだから誇れないからな?」
自分で悪人を捕えたというならまだしも、言い掛かりを付けられてギルドの監視員さんに仲裁されただけだ。俺は誇れる事などしていない。
「舞ちゃん、全国デビューとはどういう事?」
「ちょっと詳しい話を聞かせて貰う必要がありそうね?」
舞と話している間に舞のお友達が来ていたようだ。両肩をしっかりと掴み、逃げられないように確保している。
「舞、ここでお別れだ。車に気を付けてな」
「えっ、ちょっと、お兄ちゃん!お兄ちゃーん!」
小学校と中学校の分かれ道に差し掛かった為、俺は中学校に向かい舞とお友達は小学校に向かう。俺を呼ぶ舞を俺は助けてやる事も出来ない。
素手でダンジョンの九階層に行く力があろうとも、一人の女子小学生を救う事すら出来ない。兄とは非力な存在だ。
こちらをチラ見しながらヒソヒソ話をする女子や怨嗟の視線を隠そうともしない男子を無視して登校する。
「ダンジョン発生に伴う氾濫により、精強と傲っていた欧米やロシアの陸軍は壊滅的な被害を被りました。理由は分かりますか?」
「当時猛威を奮っていた機関銃ですね。対人戦で大きな力を発揮した機関銃が、モンスターには効きませんでした。砲熕兵器に頼っていたが為に壊滅したと」
「その通りです。しかし帝国軍は銃砲が効かないと直ぐに銃剣や軍刀で対処した為、氾濫を早期に鎮圧出来ました。その為アジア諸国に援軍を送る余裕まであり・・・」
先生と一対一で授業を受ける。俺の理解度で予定を前倒し出来るのが支援級の良い所だ。休んで遅れていた分をサクサクと取り返していく。
「休みの間も自主的に予習していたのかな?ここまでスムーズに進むとは思わなかったわ」
「これまで良い成績を維持してきましたから、それを落としたくなかったんですよ」
休み時間に雑談を挟みつつも、授業は順調に進む。特筆するような事もなく一日が終了した。中間テストも近い事だし、しっかりと復習しておこう。
帰宅し夕食まで復習を行う。理数系は前世と変わらないので助かる。忘れている事もあるが、ざっとおさらいすれば思い出せる。
「お父さん、お母さん。今日お兄ちゃんが出る番組が放送されるわよ」
「ほう、これか。家族全員で見ないとな」
賛成票3、反対票1が投じられ家族揃って視聴する事になった。まあ、舞にねだられた時点で否という答えは無かったのだが。兄とは弱い者なのだ。
 




