第四百三十三話
マップを頼りに三十一階層への道を進む。二十八階層からのマップは三割から七割程しか埋まっていない。これは次の階層への渦が発見された段階で次に進んでしまっているからだ。
マップを作るのは面倒だと思いつつもマップは全て埋めたいと思ってしまうのは、前世でRPGを沢山プレイした影響だろうか。昔は攻略サイトなんて無かったから方眼紙に書き込んで自作をしていた。
「玉藻様、来ます!」
前世に思いを馳せていると、木々の影から片手剣と盾を持った西洋鎧が現れた。冬馬伍長と井上上等兵が中央で迎え撃ち、俺が右翼に、久川上等兵が左翼に展開する。
接近する鎧にリーチが長い井上上等兵が先制攻撃を行う。突き出された槍は構えた盾に阻まれ逸らされてしまう。その隙に冬馬伍長が斬りかかる。
鎧は横薙ぎを剣で受け、注意が正面に向いている。そこに久川上等兵が戦鎚を振り下ろした。しかし攻撃は惜しい所で躱されてしまう。
バックステップで戦鎚を避けた鎧は久川上等兵に斬りかかる。そこに冬馬伍長が割り込んで鎧の剣を剣で受け止めた。
鍔迫り合いの状態となり動けない鎧に井上上等兵が背後から突きを入れる。しかし膝関節を狙った突きは見事に命中するも、高い金属音を残して弾かれてしまった。
「駄目です、完全に通用しません!」
井上上等兵は悔しそうに自分の攻撃は通じないと宣言した。膝裏を突いて効果無しではどこを突いても通じないだろう。
鎧から無視されている形となっている俺は空歩で高度を取り、勢いをつけて後頭部に蹴りを入れた。僅かに体が揺らぎ、体勢を崩す鎧。
鍔迫り合いをしていた冬馬伍長は受けていた剣を逸らし、肘関節に斬撃を加えた。しかし井上上等兵の突き同様、金属音を響かせるのみで終わってしまう。
「私の剣も駄目です」
「これで特別攻略部隊がミスリル以上の武器を使っている事が確定じゃな」
特別攻略部隊は三十二階層まで到達している。毎回そこまで潜れている訳では無いだろうが、動く鎧を全く倒していないという事は無いだろう。
となると、魔法か魔鉄よりも高威力の武器を使ったという事になる。魔法は撃てる回数に限りがある事を考慮すると、攻撃力が高い武器を使っていると考えるのが妥当だろう。
「私はまだ試していませんが、どうしましょう?」
「戦鎚では他の動く鎧を集める事になりそうじゃのぅ」
動く鎧の中身は空洞になっている。そんな相手を魔鉄製の戦鎚で叩いたら、鐘を叩いたように大きな音が鳴るだろう。そうなると付近の動く鎧が集まってくるという可能性もある。
「妾の蹴りも効かなんだし、まずはこれを試すかの」
懐から鉄扇を取り出して広げる。鉄カブトの角を両断した刃は動く鎧にも通用するだろうか。
動く鎧の左斜め前から冬馬伍長が間合いを詰める。振るわれた剣を盾で受け弾きかえす鎧に対し、右後方から駆け寄る。
背後からの接近だったがしっかりと捕捉されていたようで、振り返り様に剣を振るわれた。水平に薙いだ剣をしゃがんで避けると、頭上に鉄扇を振り上げた。




