第四十三話
舞と別れ中学校への道を一人で歩く。その間もこちらを見てヒソヒソ話す生徒が散見された。学校内で噂が広まるのは早そうだ。一般学級ではなく支援級になって良かったかもしれない。
職員室に行き担任となる先生に連れられて教室に向かう。卒業まで俺の担任となる幸田先生は推定二十代半ばのまだ若い女性の先生だ。
本来ならばまだ経験不足という事でクラス担任になれないのだが、たった一人しかいない支援級の担任という事でお鉢が回ってきたらしい。
「今日から卒業までこの教室で学ぶ事になります。本当ならば皆と学んで欲しかったのだけど・・・」
「支援級は俺から言い出した事ですから、お気になさらずに。却って先生方に負担をかけてしまい申し訳なく思います」
支援級の教室に入るなり謝りだした先生に、俺は逆に謝り返す。それでも申し訳なさそうな幸田先生に言葉を重ねる。
「小学校六年間も支援級でしたから、この方が気楽なんですよ。進路も探索者に確定してますから、友達作りも必要ありませんし」
「でも、探索者になるなら友人とパーティー組んだり・・・」
現状では法の統制が届かないダンジョン内で行動を共にするパーティーは相互の信頼も大事になる。なので学生時代から互いを知る友人同士でパーティーを組む例も少くない。
「幸い、持って産まれた体質とスキルのお陰で俺はソロでもそこそこ潜れます。焦ってパーティーメンバーを探すつもりも無いので、逆に勧誘されにくい支援級の方が有り難いですよ」
「そ、そうなの。それなら良いのだけれど。これからの予定だけど・・・」
気を取り直した先生から授業を進める予定を教えてもらい時間割り表を貰う。特に変わった点はないので流し見してそのまま鞄にしまった。
「暫くはお休みしていた分を戻す為に授業の進行を早くする事になります。カリキュラムで何か質問はあるかしら?」
「いえ、何もありません。明日から宜しくお願いします」
今日は授業の準備もしていなかったので明日からが本格的な授業の開始となる。歴史と地理以外は前世の知識がそのまま使えるし、歴史と地理も予習してあるので早く進行しても問題ないだろう。
そのまま終わると少々早過ぎると言うことで、少し雑談する事になった。これから受け持つ生徒の事を少しでも知っておきたいという意図もあるのだろう。
ダンジョンに潜っていたと言うと驚きながらも詳しい話を聞きたがってきた。力が強い事は事前に聞いていただろうけど、戦闘に適したスキルが無い事も聞いていただろうからもうダンジョンに潜っていると聞いて驚いたようだ。
「えっ、もう九階層まで潜っているの?」
「ヘラクレス症候群は筋肉密度が高くなるので、身体能力全般が強化されます。なので腕力強化や脚力強化のスキルよりも強力なんですよ」
どうせすぐに噂で知られる事になるので、現在の到達階層も素直に教えた。「それって、超優良物件で玉の輿になるんじゃ」と小さく呟いた声は聞こえなかった事にしよう。
少々危険を感じたので雑談をお開きにして下校する。この世界の女性達、肉食系が多くない?俺の身近だけ?




