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第四百二十八話

「二十九階層でも戦えるようじゃな」


「玉藻様の迷い家あってこそです。ここに来るまで気力と体力を消耗し、帰りの体力も温存しなければならない状態で勝てるとは思えません」


 強敵相手にトドメを刺した直後であっても、冬馬伍長に傲る様子は欠片もない。その姿勢は好ましいが、少しは誇っても良いのではとも思う。


「次はこの鉄扇と神炎がどれだけ通用するか試したいのじゃが」


「鉄カブトの角を綺麗に切断した鉄扇ならば、朱カブトの筋肉だろうと骨だろうと簡単に断つのでは?」


 久川上等兵の返しに冬馬伍長と井上上等兵も頷いて賛意を示す。俺もそう思うが、検証しておく事は大切だ。


「そう思い込んで、いざ戦いで通用せんかったら困るからのぅ。検証はやっておくべきじゃ」


 マップを頼りに三十階層への渦へと進み、再び現れた朱カブトと対峙する。今回は前に出るのは俺だけで、三人は戦わないがすぐ支援に入れるよう準備はしてもらう。


 熊の動き出しを見落とさぬよう熊の全体を俯瞰しながら歩いて接近する。もう少しで熊の射程距離に入ろうかというタイミングで左肩の筋肉が僅かに動いた。


 その直後、左腕が唸りを上げて振るわれたが俺は空歩を発動しつつ駆け出していた。左腕は虚しく空を切り、空を駆け上がる俺は熊の左肩を蹴って背後に着地した。


 俺に逃げられたと瞬時に判断した朱カブトは体ごと振り向くが、その振動で頭が体からポトリと落ちる。首から上を失った朱カブトは魔石へと変化した。


「迷い家だけではなく妖狐化のスキルも成長したのかのぅ。鉄扇の切れ味も上がったように感じるわ」


「すれ違い様に首を切っていたのですか・・・全然見えませんでした」


 一方的な圧勝に驚く三人。冬馬伍長が絞り出すように発した声で二人も再起動を果たした。


「ある程度は予想してましたけど・・・」


「鎧袖一触という言葉がピッタリですね」


 見た目は完勝だが、実は紙一重な部分もあった。まあ、それを言って水を差す事も無いと思い敢えて言わずに魔石を拾う。


「もう一体戦って昼食にしようかの。神炎の効きも試しておきたいのじゃ」


 次の朱カブトも独占させてもらい、遠距離から神炎で丸焼きにしてみた。上半身を炎に包まれた朱カブトは消火しようと両手をバタつかせたが、そんな事で神炎が消える筈もない。


「倒せたが、結構粘られたのぅ」


「三十階層が目前ですからね。モンスターの強さも格段に上がっているのでしょう」


 井上上等兵の慰めを受けながら迷い家を開く。投げ入れたままで近くに転がっている魔石を回収して家屋に入った。


 神炎はチートではあるが無敵ではない。この先も丁寧に確認しながら油断をせずに進んで行こうと改めて思うのだった。

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― 新着の感想 ―
背後に着地したとこで「お前はもう死んでいる」と言えば完璧だった(なにがだ) 相手が自分がもう終わってる事に気づかないまま動こうとして……ってのはロマンよねwww
神炎は焼き尽くす対象を選別できるから、そっち方面にパフォーマンスが集中している可能性もありますね 優君もパワーよりは精密性を重視しているから、その意識が影響しているのかも
「あさりの砂だけを燃やす」ができるのなら、 「敵の血液だけを燃やす」とかどうなんでしょう。
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