第四百二十二話
「玉藻様、尻尾もパワーアップしています。モフモフ度が更に上がっています!」
「ダンジョン攻略していればずっとこの尻尾を・・・でも、バーベキュー用品の入手もしたいし・・・」
「これはMPの回復が捗ります!」
これが海岸まで走って往復した三人が風呂に入り直した後、尻尾を各自一本づつブラッシングしながらの感想である。
「まあ、確かに妾の尻尾はモフモフじゃが・・・」
俺の尻尾はモフラーならば病みつきになる程のモフモフ感である事に異議はない。しかも、冬馬伍長曰くモフモフ感が増しているそうなのでその威力は増しているだろう。
三人が満足するまでブラッシングして就寝。俺も寝る前に尻尾のモフモフ感を確認したが、尻尾の太さや長さ、毛の柔らかさが増しているような気がした。
「修行が足りないわね。到底玉藻様のモフモフには及ばないわ!」
「何を比べておるのじゃ・・・」
翌朝は二十四階層の幻狐を相手に戦ったが、一体の幻を出せるだけの幻狐はテンションが爆上がりの三人の脅威とはならなかった。
しかし二十五階層のスレイプニルはそうはいかない。いくら絶好調な冬馬パーティーでも、速さと力に優れたスレイプニルには苦戦する。
フィールドが荒野だったのも大きい。迷宮や洞窟ならば楽なのだが、荒野なのでスレイプニルが自由に走り回れるのだ。
それでも怪我をせずに二十六階層への渦に辿り着き迷い家で昼食をとる。スレイプニルで体力を消耗した上に次も体力を消耗するデンシカ戦なので、体力の回復を優先する為にレーションと果物で済ませる。
二十六階層は草原で、逃げながら雷撃を放つデンシカの相手は骨が折れた。無視して進みたい所だけど、トレイン状態になったら目も当てられないので丁寧に倒して進んで行く。
「避雷針で雷撃が逸れたら楽なのに」
久川上等兵がぼやくが、調べたら検証された記録が出てきたそうだ。結論は避雷針を立てても雷撃は誘導出来ないらしい。
「魔力で作った雷だからじゃろうな。誘導されておるのじゃろう」
ダンジョンは修行の場だから、そういう抜け道は潰されているのかもしれない。課題が簡単になってしまったら試練の意味が薄くなるからね。
二十七階層への渦に着いたので今日の攻略はここまでにする。かなり早いが、体力と精神力を消耗した事と次の階層は俺達の自己ベストなので万全の状態で臨みたい。
一戦毎に迷い家で休憩をしていたが、蓄積された精神や肉体の疲労は短時間で完全に癒える物ではない。無理をして急ぐ必要もないしね。
「玉藻様、蛤掘ってきます!」
「私達はウニの確保に向かいます!」
「お主ら、思ったよりも元気じゃのぅ・・・」
装備を外した三人は嬉々として海鮮を確保する為に走っていった。それがストレスの解消になるならと止めずに行かせる。
それにしても、迷い家で休憩しながらでもキツイのに迷い家無しで突破している特別攻略部隊の力量ってどれだけあるのだろうか。




