第四百ニ十話
久川上等兵がバケツを取りに戻り、その中に取ったバフンウニを入れていく。四人で食べても充分な程に取れたので戻る事にした。
「玉藻様、お昼はこれで決まりですね!」
「そうじゃな。取りたての新鮮ウニ丼といこうかのぅ」
冬馬伍長と一緒にウニを割いて中身を取り出し洗っていく。鮮やかなオレンジ色の身をお皿に並べていき井上上等兵と久川上等兵には丼にご飯をよそってもらった。
全てのウニを捌き終わったので神炎で包み、人体に有害な物を焼く。これで中毒の心配をする事無く食べる事が出来る。
それを四つの丼に分けて乗せていく。ご飯は完全に見えなくなった。酢飯ではないし海苔やワサビも無いが、そこは勘弁してもらおう。
各自丼と箸をテーブルに運び席につく。お茶と胡瓜の浅漬けを持ってくれば準備完了だ。全員でいただきますと唱和して、まずはウニを口に運ぶ。
「美味しい!この濃厚な味!」
「こんなに美味しいウニ、初めて食べました!」
「美味しすぎてお箸が止まりません!」
三人は夢中でウニ丼を平らげていく。そしてお米の一粒も残さず食べ終わると名残惜しそうに丼を見つめていた。
「そんな悲しそうな顔をするでない。これで終わりではなくまた食べられるのだから」
「はっ、そうでした。また取ってくればお代わりが食べられます!」
「午後の探索もあるのじゃ。また食べられるのじゃから焦るでない」
岩場に駆け出そうとする冬馬伍長を制止して、お茶を飲み食休みをとる。三人とも迷い家に胃袋を掴まれてないか?
「玉藻様、蛤やウニの他にも海の幸を取れそうですね」
「そうじゃな。川で魚が釣れた事を考えると海でも釣れるじゃろう」
どんな生き物が居るかは調査してみないと分からないが、岩場や潮溜まりの様子を見るに豊富な生態系が構築されていそうだ。
この生き物達は何処から来たのか?とか繁殖はどうなっているのか?とか疑問は尽きないが、この空間自体が説明のつかない亜空間だ。考えるのは無駄だろう。
「戻ったら中佐に釣具や潜水用具を手配してもらう必要がありますね」
「いやいや、そこは軍に頼ってはマズイじゃろう」
ダンジョン攻略に使う物ならば支給してもらう事も出来るだろうが、迷い家の海で釣りや潜って漁をする為の器具を貰うのは公私混同だ。
「どの道地上に戻ってからじゃな。ダンジョン内ではどうしようもないからのぅ」
「そうですね。とっととダンジョンを攻略して海の幸を味わいましょう!」
ダンジョンから出た後に三人を迷い家に招く事が勝手に決められてるけど、楽しそうだし反対する事も無いな。
「ところで玉藻様、ウニを神炎で消毒していましたが蛤の砂も神炎で焼けば砂抜きの必要は無かったのでは?」
「・・・あっ」
久川上等兵のツッコミをスルーし午後の探索に向かう。攻略終了後の海鮮パーティーというご褒美に釣られた三人は午前を凌ぐ強さを発揮するのだった。




