第四百十九話
想定外の事態に予定を変更して海辺に移動する事にした。まずは砂浜に来てみたが、真っ白な砂と青い水面が美しく見ていると時間を忘れてしまいそうだ。
「くっ、何故私は水着を持って来なかったのか・・・」
「これを予見しろと言うのは無理じゃろ」
悔やむ冬馬伍長にツッコミを入れつつ、素手で砂を掘ってみる。すると掌程もある二枚貝を掘り出す事が出来た。
「こんな簡単に蛤が取れるとか、今更ながらぶっ壊れスキルじゃのぅ」
「玉藻様、これ、食べても良いですよね!」
俺が蛤を掘り出したのを見た三人も砂を掘り、それぞれが大きな蛤をゲットしていた。網で焼いて醤油を垂らしたら美味しいだろうな。
「迷い家の事じゃから中毒を起こしたりせぬじゃろうが、出来るならダンジョンから戻ってからの方が・・・」
確か、蛤の中毒は三月頃に始まりピークは五月頃だった筈だ。まだ二月なので時期的にも安全だと思われる。しかし、万が一という事もある。すぐに治療が受けられる地上に戻ってからの方が良いだろう。
「・・・そんな泣きそうな顔をするでない。じゃが、砂抜きが必要故食べるのは夕食時じゃよ」
「「「やったぁ!」」」
ため息と共に折れた俺に三人が喜びの声をあげた。折れたのは三人の食欲に負けたから・・・ではなく、完全に中毒を防ぐ方法を見つけたからだ。
一つでは足りないというので更に砂を掘って蛤を増やし、建屋に戻って桶に入れる。容器を持って砂浜に戻り、海水を汲んで桶に投入。布巾を被せて暗くした。
貝は夜間に活動するので、砂抜きは暗い場所で行えば早く砂が抜ける。なので、こうやって何かを被せて暗くしてやると良いのだ。
「玉藻様、岩場も見に行きましょう!」
「昼食を取らんで良いのか?」
「また食材が見つかるかもしれませんから」
井上上等兵の誘いに昼食を食べないのかと聞くと、こんな答えが返ってきた。他の二人も異存は無さそう、と言うより行きたそうなので岩場も見に行く事にした。
岩場には平らな岩棚となっている場所もあり、窪んだ場所に海水が残り潮溜まりとなっていた。あちこちにカメノテやフジツボといった貝類も付いている。
「あれも塩ゆですると美味しいですよね」
「今は取っている時間が無いから却下じゃ」
カメノテなんて小さい貝、皆が満足する量集めるのにどれだけ時間がかかるやら。今はそれよりも岩場を調べるのが先だ。
「何かいるやもしれんな。潮溜まりも覗いてみようかのぅ」
透明な水の中で小さな魚が泳いでいるのが見える。その奥に大量の棘を生やした丸い生き物が。あれはバフンウニか。酷い名前と裏腹に高級食材となっているウニだな。
「玉藻様、あれも取って良いですよね?」
「迷い家で漁業権云々言われる事は無いじゃろうから構わぬじゃろう」
迷い家の持ち主は俺だし、漁協に文句を言われる事は無いだろう。それ以前に日本の法律の適用範囲内かどうかも分からないしね。




