第四百十話
作者「書籍化など全く考えていないからこそ出来るネタだな」
優「これ・・・本当に大丈夫なのか?」
白泉社様、これくらいならお目溢しいただけますよね?
「今も英国には大日本帝國の武官は駐在している。しかし全員が海軍士官で陸軍士官は一人も居ない」
「英国との接点を持っているのは海軍ですから、それは当然ですよね」
陸軍はダンジョンの管理を主任務としている。英国は欧州各国にモンスター討伐の支援をしているが我が国は絡んでいないので、欧州に陸軍軍人を派遣する意味は薄いのだ。
対して海軍は我が国と英国との間の航路を維持管理するという任務を共同で行っている為交流する機会も多い。故に駐在武官を派遣するとなると海軍士官が派遣される事となる。
「しかし、ロシア皇帝の亡命で事情が変わる。ロシアは日本に皇帝陛下の返還を求めるだろう。そして、モンスターの処理に目処が付けば西方に目を向ける可能性が高い」
俺は返事をせずに少佐の言葉を待つ。少佐の言に引っかかる事があったので反応を示さなかったのだ。ロシアが皇帝陛下の返還を求める可能性は高いと思うが、西方への侵略はどうだろうか。
モンスターの駆逐が完了したとしても国は分裂状態で、都市ごとに統治者が権利を主張している状態だ。国として纏まっていないのに欧州に色気を出すとは思えない。
「皇帝陛下が大陸に戻るとしたら、大日本帝國が援助する事となるだろう。そうなれば主力は陸軍だ。その時に欧州の陸軍と歩調を合わせる必要があるだろう」
ニックやアーシャが祖国の奪還を目指すならばその意見は正しいと思う。だけど、二人はそれを望んでいない。英国の情報部はそこまで掴んでいないのだろうか。
「そうだとしても、まだ士官学校に入学もしていない若輩者を駐在武官にというのは性急過ぎませんか?」
「そりゃ、こんなどストライクな子早く口説いてあんな事やこんな事を・・・ゲフンゲフン、若いうちから視野を広げる事は大事だよ。凝り固まった考えに染まる前に外国を体験するのは良い財産になるだろう」
・・・今、心の中の願望が漏れ出て無かったか?舞も冷めた目で曽我部少佐を見ている。
「お兄ちゃん、英国って大丈夫なの?」
「同盟国だし、国自体は大丈夫だと・・・仮にも日が沈まない大国と言われた国だしなぁ」
同盟国にこんな士官を寄越す英国に、舞は疑念を抱いてしまった。俺も少し・・・いや、かなり英国に対する信頼が低下している。
「どちらにしても、この場では何も確約出来ません。上司に報告も必要ですし」
「勿論、今すぐ返事をとは言わない。今日は君に会えただけで色々とはかど・・・収穫があったよ」
曽我部少佐は伝票を取ると会計を済ます。外に出るとすっかり日が暮れていた。
「今日はありがとう。また顔を合わせる事になるだろう。その時は宜しくな」
颯爽と去って行く曽我部少佐を見送った俺達だったが、彼への印象は話す前と後では大きく違っていた。
「曽我部少佐みたいな人が居るなら、英国には行きたくないなぁ」
俺はノーマルなので少佐のような紳士にモテでも嬉しくない。かと言って、大木伯爵令嬢みたいな人にモテるのも遠慮したいなぁ。




