第四百一話
情報部と冬馬パーティーに玉藻の正体をバラし、残るは宮内省と天皇陛下となった。伝えるのを関中佐にお任せ・・・とはいかず、再度天皇陛下と謁見する事になってしまった。
謁見を翌日に控えた土曜日、趣味の仏像彫りをしているが明日の懸念が頭から消えてくれない。これは仏様ではなく女神様を彫ったからだろうか。
「・・・この女神様にお願いしたら、謁見が終わった未来に飛ばないかなぁ」
木像ではなく本物の女神様、宇迦之御魂様ならばとも思うけど、人間の世界への干渉は御法度だし司る権能が違う。
「お兄ちゃん、この女の子は?」
「三姉妹の女神様の三女なんだ。長女が過去を、次女が現在を、三女が未来を司る女神様なんだ」
尚、姿の参考にさせてもらった前世の文献では長女はお酒好き、三女はアイス好きだった。
「お兄ちゃんは明日アーシャとニックに会えるのよね。舞も行きたかったなぁ」
「天皇陛下も同席されるからね。流石にちょっと無理だなぁ」
陸軍のダンジョン攻略を行う部隊や実行日時は機密となる為、俺が皇居ダンジョンの攻略に参加する許可を得る為に宮内省に行きますなんて公表出来ない。
なので表向きの理由として、ロシア皇帝陛下も落ち着いたのでお救いした俺に再会する為呼ばれたという事になっている。
そこに天皇陛下も同席され、功績を挙げた俺を労うという行事となり初めのうちは報道各社の撮影もされる事になった。
「残念だけど、舞はテレビで見てるから。録画もちゃんとやっておくからね!」
「いや、録画までしなくて良いから!」
天皇陛下の前で緊張しまくっている自分を後でテレビで見るなんて、完全に罰ゲームだろ。
本当はマスコミなんて入れて欲しくないのだが、陸軍のPRになる事と、俺の露出を増やす事で貴族家などに変な手出しをして来ないよう牽制する意味もあるのだ。
これは大木伯爵家の件を受けて関中佐が仕組んだ物で、貴族家への牽制と天皇陛下への謁見の口実にするという一石二鳥の行事となる。あ、陸軍のPRもあるから一石三鳥か。
「優ちゃん、明日の服装は軍服で行くの?それともベルウッド学園の制服?」
「陸軍軍属として行くから軍服で行くよ」
母さんが明日の服装を聞いてきたので答える。服装については陸軍広報部から指定されているので勝手に変える事は出来ない。
「うちから着ていくと目立つから、軍服は着せ替え人形に着せて市ヶ谷までは私服で行くけどね」
「優ちゃんのスキル、本当に便利ねぇ」
母さんが染み染みと呟くが、俺も全く同意見だ。服を持ち歩かなくて良い上に一瞬で着替えられるのだから、こんな時には本当に重宝する。
「あっ、お母さんや伯母様達に優ちゃんがテレビに出るって言わないと」
「やめて下さい、お願いします!」
振りじゃないからね、本当に拡散なんてするのは止めて!




