第三百九十五話
「実は、そろそろ皇居ダンジョンの間引きをしなければならないのです。しかし、色々な事が重なり緒方元少将の後任はまだ決まっていません」
「・・・トップ不在で攻略部隊を動かせないと」
緒方元少将の失脚にもその後のゴタゴタにも関わっているのでバツが悪い。
「そこで特別攻略部隊の代わりに深くまで潜れる冬馬パーティーを充てればという意見が軍内から出たのです」
「皇居ダンジョンならば二十七階層以降も地図があるから、水中ダンジョンより進むのは楽ですね」
水中だと最低でも次の階層への渦を見つけるまでマッピングをしないと先に進めないが、皇居ダンジョンならば特別攻略部隊が作成した地図が存在する。
「特別攻略部隊には水中ダンジョンの地図作成をさせれば一石二鳥との絵図を描いたのですが・・・」
「トップ不在で動かせないとなっているのに水中で使うのは良いのですか?」
動かせるなら皇居ダンジョンで間引きさせれば良いだけの話だと思うのだが。まあ、こちらとしては地図作成の手間が省けるのは嬉しいと言えば嬉しいけどね。
「宮内省管轄の皇居ダンジョンで何かあった場合トップ不在ではマズイですが、うち直轄の水中ダンジョンならばどうとでもなります」
「ああ、そういう・・・」
天皇陛下の御座所にあるダンジョンと、山の中で陸軍が管理しているダンジョン。そりゃ同列に語れる物では無いよな。
「しかし、長く皇居ダンジョンを攻略してきた特別攻略部隊ならまだしもぽっと出のパーティーに攻略させる事に反発する者もいまして」
「公式には冬馬パーティーに玉藻が随伴していない事になってますからね」
玉藻のスキルへの関心を薄める為、公には冬馬パーティーには滝本優がバックアップを行っている事になっている。
しかし、バックアップをしている滝本優が神の使徒である玉藻だと明かせば反対する者も口を閉じざるを得なくなる。
「以前に居た侍従のような人達でなければ明かしても構いませんが・・・」
「そこは天皇陛下と信頼できる侍従のみに限定致します」
反対する者に玉藻の正体を明かさずとも、天皇陛下とその側近が納得しているとなれば。口を出せなくなるだろう。
「了解しました。明かす日時や場所などはお任せします」
「手筈を整え次第御連絡致します」
用事が済み情報部に戻る中佐に作り置きしておいた干し芋と干し柿を渡す。代わり映えしない物だが、保存や食べやすさを考えるとレパートリーは限られてしまう。
「優、また天皇陛下に謁見する事になるのか」
「えっ、あれ?関中佐から伝えて終わりに・・・ならないのかな?」
俺の口から伝えなくても関中佐が伝えれば済むと思っていたのだが、もしかしてまた天皇陛下とお会いする事になるのかな?
「ロシア皇帝陛下や皇女殿下と親密になっていて今更じゃないか?」
「父さん、それはそれこれはこれだよ」
ニックとアーシャとはずっと顔を合わせていたから慣れたけど、天皇陛下はまた別だからなぁ。




