第三百七十八話
真贋判定スキル保有者が何も言わない事で関中佐が俺にそれを伝えていない事が確定した。俺は説明を続ける。
「となると、関中佐の判断が正しかったのかを確認する必要が生じます。それが先ほどの襲撃かと」
「その通りだ。君がソロで二十階層を突破した優秀な探索者だと報告は受けていたがね・・・」
「モンスターを倒す力と誰かを守る力は違います。いつ、どんな手段で、何人に襲われるか分からない状態での襲撃を捌けるかの確認は必要と思います」
ここまで説明するのは、関中佐に応える為だ。中佐は迷い家の秘密を守る為に護衛の派遣を断ってくれた。ならば俺はそれが正しかった事を証明し、中佐の評価を下げないようにしなければならない。
要人の護衛は力だけでは務まらない。あらゆる判断材料を考慮し、起こるかもしれない事態を想定し、それに対応出来るよう備える必要がある。
だから俺は武力だけでなく政治的な行動も理解し備える能力があるとお偉いさん達に示した。俺や家族に気配りをしてくれる上司が正しかったと判断させるために。
「襲撃対象が父さんになったのは、陛下と殿下は論外で中佐は自ら対処されてしまうので除外。誰かを守れるかを見るのが目的なので、私自身も除外され消去法で父さんしか居なかったのでしょう」
力試しに襲われるだろうと警戒していた事と、対象が父さんに絞れた為防ぐのは楽だった。
「素晴らしい。関中佐、彼を宮内省に転属させて欲しい。あのスキルといい、皇族の方々の護衛に任命したい」
「それはご勘弁を。彼のスキルはダンジョン攻略にも極めて有効です。手放す訳にはいきません」
ちょっとやり過ぎてしまったようだ。侍従長が関中佐に俺の移籍を提案してきた。当然それを受ける事無く中佐は即座に断った。
「では質問を続けよう。陛下が毒を受けて倒れたと報告にあったが、それを診断したのが貴方ですね」
「はい。私は相手に触れる事で健康状態を診断できるスキルを授かっています」
総理が質問を続けるが、対象が俺から父さんに移った。父さんは緊張しつつも質問に答えた。
「試しに私を診断してくれませんか?」
「良いですよ。お手を拝借・・・良性ですが、胃に腫瘍があります。悪性ではないので緊急性はありませんが、お時間がある時に切除される事をお勧めします」
「凄い、この前の健康診断で同じ事を言われました」
テスターを買って出た真贋スキル保有者の手を取った父さんが結果を伝える。大がかりな検査を必要としない父さんのスキルも大概チートだよな。
「後程私もお願いしたいがよろしいかな?」
「はい。この通り手間も時間も掛かりませんので」
偉い人程健康状態を知っておかねばならないが、忙しいので検査に時間を割く事は難しいだろう。その点手間も時間も必要ない父さんはお偉いさんには有り難い存在だ。
「中佐、どこでこんなに有能な親子を見つけて来たのだ?」
通産大臣の問に答えず惚ける関中佐。電話対応が嫌で逃げ出した先で見つけましたなんて言えないよなぁ。




