第三百七十七話
「君は何故お二人がロシア皇族だと判断出来たのかね?」
「皇女殿下より陛下と殿下の御名をお聞きしました。過去に同名の皇族の方がロシアに居られた事を覚えており、刺客に襲われる身分である事と偽る意味がない事から正真正銘の皇族方と判断しました」
ニコライとアナスタシアの名を知っていたのは前世の話だが、そんなの言わなければ分からない。そして嘘をついている訳でもないので、真贋判定のスキル持ちも反応していない。
「偽る意味がないと断じた理由を詳しく教えてくれ」
「真贋判定のスキル保有者が居る以上、嘘は必ず暴かれます。嘘をついて一時的に優遇されたとて、皇族と偽った事が判明すれば命は無いでしょう。得られる利益と代償が釣り合いません」
外務大臣の問に即座に答える。これも嘘ではないのでスキル保有者に何の動きもなかった。
「では、襲撃者が陸軍の者ではないと見破った時に・・・」
総理大臣が次の質問をしている最中、黒服の一人が伸縮式の警棒を伸ばし父さんに襲いかかった。俺は着せ替え人形を発動し、大盾で警棒を受ける。
そのままシールドバッシュで壁に飛ばし、続いて左右から襲ってきた黒服の警棒を換装した双剣で同時に弾く。
「それまで!それまでだ!」
体勢を崩した両者の喉元に剣を突き付けた所で総理大臣の制止する声がかかった。双剣が女性体の着せ替え人形に装備されていた為、俺の今の出で立ちはドレスアーマーに双剣となっている。
無手だった筈が武具を使った事と男の俺がいきなり女性になった事で大臣の皆は勿論、SPやスキル保有者の二人も驚愕を露わにしている。
「私は着せ替え人形というスキルで予めセットした装備と瞬時に換装する事が出来ます。また、女性体というスキルにより女性専用装備も扱う事が可能となります」
いきなり武器を手にした理由と女性になっている理由を説明し、無手状態の男性に戻る。いつまでも武器を持っているのはマズイからね。
「何と・・・そんなスキルが存在するとは。いきなり襲いかかった事を謝罪しよう」
「いえ、お気になさらずに。必要な事項だった事は承知しております」
父さんが襲われる事を想定済みだと伝えると、驚いた総理の目に好奇心の色が浮かぶ。
「ほう、何故そう思ったのかな?」
「陛下の事を知らされた時、大臣の方々はSPを送ろうとしたと推測しています。しかし、関中佐はそれを断ったのではないでしょうか」
ロシア皇帝父娘が来日していて襲われたと聞かされれば、その身柄を安全な場所に移し護衛を付ける事を考えるのが当たり前だ。しかし護衛を迷い家に入れるつもりがない関中佐は俺が護衛に付いている事を理由に断ったのだろう。
「中佐、それを彼に伝えたりは」
「しておりません」
文部大臣の問を遮る形で即答する関中佐。失礼な対応だけど、前に俺の件で揉めたからまだ根に持っているのかな?




