第三十七話
翌朝、まだ学校からの連絡は無いので舞を学校に送り出してからいつもの2015ダンジョンに潜る。こちらは人がほぼ来ないので、落とし亀を妖狐で倒してみるつもりだ。
いつも通り人が少ないギルドを抜けてダンジョンに潜る。六階層で妖狐に変わり青毛熊を燃やしながら進む。妖狐だと青毛熊を瞬殺出来るので進みが早い。
続いて七階層のゴブリンも丸焼きにして進む。臭いゴブリンを近くで相手しなくて良いというのは本当に有り難い。八階層もスムーズに進み、九階層に降りる。
2015ダンジョン九階層の地形は荒野だった。2222ダンジョンと違い落とし亀が潜む場所が分かりにくい。感知系のスキルがあれば楽なのだが、生憎俺は持っていない。
地図に従い十階層への直線ルートを歩いていると、いきなり足元の地面が消滅した。しかし妖狐となった俺には空歩という有り難いスキルがある。
空中を蹴って穴の縁に戻り、ポッカリと空いた穴の底を見ると落とし亀がこちらを見上げていた。狐火を一つ放り込んでやると、一瞬後に穴が塞がり魔石が落ちていた。
穴の中で熱が逃げずに威力が増したのか、亀さんに魔法耐性が無かったのか。一撃で倒せる事は確認出来たので、次の階層に進んでしまおうと思う。
地図を辿り、無事に降りる階段に到着した。降りた先には見渡す限り緑の絨毯が広がっていた。九階層の地形がこの草原ならば落とし亀を見つけるのも容易いのだが、そうそう上手くいかないのがダンジョンだ。
「ブモ、ブモォォォォ!」
興奮し、ドタドタと駆け寄ってくる直立歩行の豚が見える。ファンタジー小説で定番のモンスター、オークさんである。
大概の小説に描かれる例に漏れず、この世界のオークもオスしか居ない。なので女性を見れば興奮して襲いかかってくるのだ。
今の俺は身体は女性であるものの、精神は男性だと自認している。なのに強烈な怖気に襲われるのは、身体に引っ張られているからだろうか。
「汚物は消毒!燃え尽きろ!」
嫌悪感に任せて狐火を二つ飛ばす。着弾と同時に上がった火柱はオークに断末魔をあげる事さえ許さず燃やし尽くした。
次に遭遇したオークには狐火一発をお見舞いしたが、それだけで倒す事が出来た。二発食らわせたのは完全にオーバーキルだったようだ。
次に試したのは接近戦。振るわれる棍棒をかわし、腕を鉄扇で切る。持っていた棍棒ごと落ちた腕に動揺するオークとすれ違うように飛び上がり、首を切り裂くと絶命した。
その後何匹かのオークを倒してみたが、妖狐ならば楽勝で倒す事が出来た。これならばもっと先の階層まで降りても問題ないと確信できる。
まだ時間があるので先に進むか早めに戻ろうか悩んでいると、派手な爆発音が聞こえてきた。モンスターに爆薬は効かないので、魔法スキル持ちの攻撃だろう。
十階層のオークは基本的に単体でしか出て来ないが、あんな音を響かせては複数のオークを集める事になってしまう。念の為音源を確認する事にした。
空歩で高度をとり走っていると、音に惹かれたオークが集まりつつあるのが見える。その先では迷彩服を着た男女がオークと交戦している姿が見えた。




