第三十六話
翌朝、朝食を食べてギルドに向かう。平日で時間が早い為通勤ラッシュに巻き込まれたが、用事を済ませた後ダンジョンに潜りたかったのでラッシュの解消を待たずに移動した。
ギルドの窓口で用件を伝えると、すぐに応接室へと案内された。少し待たされた後男性職員が持ってきた契約書に目を通す。内容に特に不備もなく、少額ではあるもののギャラが発生し支払われる事になるのが予想外だったが異存は無いので署名捺印し用件を終えた。
一時間も掛からずに終えたので、まだまだ時間はある。前回中途半端な階層で引き返した2222ダンジョンに潜っていく。
今回は言い掛かりを付けられる事もなく三階層を突破した。出てくるモンスターは黄金虫以外は2015ダンジョンと変わらない。地形が違っても八階層まではスムーズに行く事が出来た。
そして未経験の九階層。ここに出てくる敵は落とし亀というモンスターだ。陸で活動する甲羅の直径が一メートル程の陸亀で、イメージの通り防御力が高い反面速度は遅い。
地中に深さ三メートル程で甲羅と同じ大きさの穴を掘って潜み、地表スレスレで四肢を突っ張り獲物を待つ。人間が上を通ると四肢を引っ込めて人間諸共穴に落下。落ちた人間を捕食する。
土魔法で甲羅の上に土を乗せ欺瞞するので発見しにくいが、地形が迷宮だとそこだけ土なので丸わかりという間抜けな醜態を晒す。
このダンジョンの九階層は草原で、落とし亀が居る場所だけ不自然に草がない。体重が乗らないよう慎重に足で突付くと出来た穴の中に亀が居るという状況になる。
「・・・これ、降りて倒さないとダメか」
妖体化して狐火でこんがり焼けば無傷で倒せるが、この2222ダンジョンはいつもの2015ダンジョンよりも人が多い。妖狐となった姿を見られる危険は避けたい。
飛び降りつつ甲羅に蹴りをお見舞いするも、大して効いた様子が無い。首だけ出して噛みつこうとする落とし亀の攻撃をかわしつつ、柔らかい頭部にカウンターでパンチを繰り出す。
20分程の泥試合の結果、落とし亀は魔石となり穴も消えて地上に戻る事が出来た。攻撃を食らう事は無かったが、体力の消耗が激しい。
しかも、甲羅を殴った反動で籠手が破損してしまった。着せ替え人形で修復させる必要がある。この状態で次の階層に向かうのは止めた方が良いだろう。
十階層に出てくる敵はファンタジーものでお馴染みのモンスターのオークだ。例に漏れず直立歩行する豚さんで、強い力と分厚い脂肪による高い防御力を誇る。負けるとは思わないが、力でゴリ押しするには面倒な敵だ。そろそろ何かしらの武器を調達しないといけない。
すぐにダンジョンを出ず、帰り道の五階層で奇襲ヘビを狩って魔石を稼ぐ。折角来たので相応の収入を得てから帰りたかったのだ。
六階層の青毛熊は倒すのに時間と体力を使うし、七階層のゴブリンは臭いのでパス。八階層の迷い猫は倒すのは楽だが、可愛いニャンコを倒すのは精神的にキツイ。
蛇の乱獲で纏まった収入を確保し、武器の資金を増やした俺は一階層で土産用の豚肉を確保して帰途についた。




