第三百三十六話
終業式の翌日、朝食を食べると最寄りのダンジョンに潜る。ここ暫く優での到達階層を更新していなかったので、玉藻と同じ二十七階層までは行っておきたい。
途中二階層で新しい武器であるトンファーの使い勝手を確かめた。蹴撃兎の蹴りを受けてみたのだが、剣で受けるより安定して受けられたと思う。
更には十七階層のゴーレムや二十階層のブロンズゴーレムも関節部分を綺麗に切り落とす事が出来たので攻撃力でも十分な戦力になってくれている。
二十一階層の影兎戦も問題なくこなし、優としては初お目見えのビッグトード戦に挑む。まずは飛んでくる水球を躱す。
間合いを詰めると舌が伸びてきたので躱し切り落とす。こいつの舌は冬馬伍長も切り落としていたのでここまでは想定内。問題は奴のブヨブヨとした体表を切れるかどうかだ。
痛みで半ば狂乱状態のビッグトードが飛ばしてくる水球を避けて接近し、すれ違いざまに脇腹を切る。魔鉄の剣では切れなかった表皮は見事な切り口を見せていた。
後は水球を躱して切り傷を増やしていくだけの簡単なお仕事です。万が一躱し損ねても大きなダメージにはならないし、濡れたら体を拭いて着せ替え人形で別の服に着替えれば良い。
二十三階層への渦に到着したが時間が遅くなったので玉藻になって迷い家で休む。寝る前に尻尾のお手入れをするのは忘れない。
翌朝、迷い家を出て優になる。相手は赤獅子、まずは落とし亀の大盾を装備して挑むとしよう。
森林ステージで見通しが悪い状況の中周囲を警戒しながら歩く。灌木が揺れる音がしたかと思った次の瞬間、真紅の巨体が襲い掛かってきた。
振るわれた前脚を盾で防ぐ。結構な衝撃を受けたが跳ね返し、女性体に変化して斧槍を伸ばし反撃の突きを食らわせる。
しかし女性体になった時と斧槍を伸ばす時の僅かな時間のロスにより躱されてしまった。まずは当てる事を優先した方が良さそうだ。
双剣に切り替えて対峙する。トンファーを選ばなかったのはこちらの方が間合いが長いので当てやすいだろうという判断だ。
駆け寄り口を開いて噛みつきにきた赤獅子を躱し、無防備な背中に剣を振り下ろした。モフモフな毛皮を切りダメージは与えたが深手とはならなかった。
そのまま躱しながら傷を重ねていっても勝てそうだが、それだと時間と体力の消耗が大きそうだ。俺は赤獅子が離れた隙に落とし亀の大盾に装備を換えた。
低い体勢で突進し頭突きをかましてきた赤獅子に対して前傾姿勢で大盾を構える。ぶつかった瞬間に頭を振り上げられ空中に放られたが大盾を放し鬣を掴んで背中に乗った。赤獅子は俺を振り落とそうと暴れたがトンファーに換装して刺しまくると光と共に魔石へと変化した。
表面を切ったのではなく突き刺したので一概に比べられないが、魔鉄の剣よりもオリハルコンのトンファーの方がダメージが大きい気がする。
お値段が違いすぎるのでそうでなくては困るのだが、検証の結果次第ではこの先は魔鉄の双剣は出番が減りそうだな。




