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第三百三十二話 とある施設の一室にて

 飾り気の無い廊下をスーツを着た男性と二人の軍服を着た男性が歩いている。軍服のうちの一人は横に広がった体型をしていて、他の二人のペースに合わせて歩くのがきつそうだ。


「失礼します、お客人をお連れしました」


「ご苦労、入ってくれ」


 プレートもかかっていないドアを開けて中に入る。部屋に置かれている机には書類が積まれ、三十代に見える男性がペンを置いて入室してきた者達を見る。


「我らの拠点にようこそ。そちらにおかけ下さい」


 男は立つと近くに設置されている応接セットに向かう。軍服の二人もそれに倣いソファーに座った。二人をここまで案内してきた男は部屋から退出していった。


「無事に脱出された事をお喜び申し上げます。我々解放同盟はお二人を歓迎致します」


「解放同盟?お前達は何なのだ」


 太った軍服の男、緒方元少将は自分達を導き入れた組織の事を知っていないようだ。にも拘らず付いてきたのは、彼らには頼れる存在が他に無かったからである。


「今の社会はスキルが物を言います。優れたスキルの保有者は優遇され、使えないスキルの保有者は冷遇されます」


「そんな事は言われんでも分かっておる。俺がその被害者だからな」


 緒方元少将は小指を角にぶつけた痛みを他者にも移すスキルという世にも珍しいスキルの保有者だ。かなりの苦労をしてきたのだろう。


「それは重々承知しております。しかし、悲しい事に閣下のような被害者は世の中に多く存在します。そんな者達を救済しようというのが我々解放同盟なのです」


 立ち上がり、両手を広げて熱弁する男を緒方元少将は胡乱な目で凝視する。


「世の中には閣下のようにスキルと関係なく優れた者が居ます。しかし、その殆どの者は冷遇され能力に見合った立場を得る事は出来ません」


「閣下のような出世を出来る人は稀でしょうね」


 男の熱弁にもう一人の軍服の男が同意する。緒方元少将もその点には異論は無さそうだ。


「そんな間違った世論を破壊し、スキルの呪縛から社会を解放するのが我々解放同盟です。お二人には是非とも我らの同志となって欲しいのです」


「俺は追われる身だ。地位も権力も影響力も全てを失った。財力も口座は凍結されているだろう。そんな俺に何を期待している?」


「閣下は希望だったのです。スキルに頼らず少将にまで昇進した、不遇スキル持ちの目標だったのです。それは謀略で追われても変わりません。閣下には不遇スキルを持つ者に現状を打破する勇気を与えて欲しいのです」


 あからさまなお世辞ではあったが、スキルに頼らず少将まで昇った事は事実であり真実が含まれていた。その為緒方元少将は自尊心を擽られ気が大きくなってしまった。


「スキルのせいで埋もれている優秀な者達を閣下に勧誘して欲しいのです。そしてスキルに胡座をかいている者達に正義の鉄槌を振り下ろすのです!」


「そうか・・・俺がどこまで役に立つかは分からんが、スキルに恵まれなかった若い者達の為にはたらいてみせようぞ」


「おおっ、閣下のご協力を得られるなら心強い。この帝国を正すため、共に戦いましょう!」


 立ち上がり固い握手を交わす二人。こうして緒方元少将と彼を脱走させた軍人は怪しい組織に身を投じるのであった。

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― 新着の感想 ―
どう考えても、ただのテロリストですね 或いは海外の工作員の可能性もありますが、流石にそこまで情報部など防諜組織が無能だとは思いたくない
能力はあったんだろうけどその地位を失うことになった理由はまっとうなものだからどうしようもないだろね。 ただのテロリストっぽいしどのみちお先真っ暗だわ。
う~んアウト!ってかこの組織、どっから資金とか出てるか考えたらたぶん他国の諜報機関が絡んでるやろ…… 一人勝ち状態とも言える日本の足を引っ張たりを画策するには国内を混乱させて安定を奪うのが一番だろうし…
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