第三百二十五話
「玉藻様、ご足労頂きありがとうございます。かなり話題になっておりますよ」
「たまには移動する姿を見せておかぬと要らぬ推測を招くからのぅ」
今日は朝から報告と戦利品引き渡しの為に市ヶ谷の情報部を訪れているのだが、移動中の姿を目撃されSNSで拡散されている。
優の姿で上野へ降りた俺は恩賜公園の森で玉藻に変身。国鉄で上野から市ヶ谷に移動したのだ。当然電車に乗る姿は多くの人に目撃され、撮られた動画が動画投稿サイトにアップされている。
「よく考えたら、巫女服の狐獣人が電車に乗っておるというのはシュールな光景じゃな」
「よく考えなくてもシュールですよ」
そんな珍しい光景が目の前にあれば注目されたり動画に撮られるのも無理はない。
「まずは戦利品の引き渡しじゃな」
迷い家を開き保存していた魔石やレアドロップを出していく。関中佐はそれを袋に入れると部長室から出て行った。
「玉藻様の取り分は玉藻様のスマホ決済で使えるようにしておきました。金額は後程ご確認下さい」
程なくして戻って来た関中佐に取り分が振り込まれた事を知らされた。次はダンジョン探索の報告だ。
「原付は中々使えたのぅ。電鹿を無視するのにかなり役に立ったわ」
「それは何よりです。しかし不便な点もあったと報告されていますが・・・」
「戦鎚や槍を持ったまま乗れない点じゃな。屋根の無い四輪バギーがあれば便利じゃと思う」
バギーなら武器を手放すのは運転手一人で済むし安定性も良くなる。代わりに小回りが利かなくなってしまうが、そこは地形に応じて使い分けるのが良いだろう。
「バギーですか・・・ご用意出来るのは来年度になりそうです」
「急いではおらぬ。あれば便利という程度じゃからな」
軍の予算は無限ではない。予算の使い道は決まっているので突発で「こんな装備が欲しい」と言ってもすぐに買うという訳にはいかないのだ。
幾らかの予備費もあるのだろうが、情報部だけで大量に使う事は出来ないだろう。それに、もし購入したらバギーなど何に使うのかと詮索されてしまう。
機密が多い情報部だけに使途を明確に出来ない物もあると言えばあるらしいが、バギーを買ったと販売店から情報は漏れるだろう。
「電鹿はかなり面倒な敵じゃったな。軍はレアドロップを集めておるそうじゃが、どのように集めておるのじゃ?」
迷い家を使えない軍があんな面倒な電鹿をどうやって大量に狩っているのか。それを考えると食事も朝・昼・夜の三食とおやつくらいしか喉を通らない。
「軍が狩り場にしているダンジョンは、二十六階層が迷宮なのです」
「ああ、それならば格段に楽になるじゃろう」
俺達がスレイプニル戦で楽をしたのと同じである。曲がり角で待ち伏せすれば雷撃される前に倒せるだろう。
「それでも輸送などで苦労しているようです。もしかすると将来玉藻様のお力をお借りするやもしれません」
「それは構わぬよ。その辺の塩梅は関中佐にお任せする故よしなに」
関中佐が他の部署に恩を売れば、玉藻や優にちょっかいを出しにくくなるだろう。中佐の仕事は増えるかもしれないけど、また差し入れを作ってくるから頑張ってほしい。




