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第三百二十話

「昨夜は狐対策を話していて二十五階層のモンスターについて話さなかったのう」


 あの後も狐対策ばかり話してしまい、今日戦うモンスターについては話題に上がらなかったのだ。


「二十五階層はスレイプニル、六本の足を持つお馬さんですね」


「伍長、スレイプニルって八本足だったと記憶してますが」


「久川、それを私に言われても・・・」


 ダンジョンのモンスターは地球の神話等から創られた訳ではなく、異世界で創られた物がたまたま地球の動物や神話生物に似ているからその名前を付けられたに過ぎない。例えば蹴撃兎は蹴りを繰り出す兎ではなく、蹴りを繰り出す兎に似た何かなのだ。


「資料では素早い割に小回りも利き、突撃の威力は高く体力も多い難敵となっておるが・・・」


「スレイプニルさん、ダンジョンに文句言っても許されると思います」


 二十五階層に降りてきた俺達が見たのは、自然の物ではない壁と石畳で作られた通路だった。この階層は迷宮ステージなのである。井上上等兵の意見には俺も全面的に賛成だ。


「勢いが乗った突撃を用いたヒットアンドアウェイが持ち味じゃろうに、これではろくに突撃も出来まいて」


 何度も言っているが、ダンジョン内のフィールドはダンジョン作成時にランダムで作られた。故にモンスターの長所を殺す場合もある。


「あっ、蹄の音が」


「ここでは私の気配察知は要らない子ですね」


 下が石畳なので馬の蹄の音が大きくなっている。曲がり角で見えなくても近付いてくる音でスレイプニルの接近が容易く分かってしまった。


「角で待ち伏せしよう。久川、出合い頭に一発頼む。井上は追撃を」


 二十四階層に続いてここも通路が狭く、並んで戦闘出来るのは二人が妥当だ。右に曲がる角の内側に久川上等兵が待機し、左側に井上上等兵が待機した。


「もうすぐ・・・今だっ!」


 サラブレッドの倍の大きさはあるスレイプニルの馬面目掛けて戦鎚が振られた。こちらに気付いていなかったスレイプニルは無防備にその一撃を食らう。更に井上上等兵の槍が首に突き刺さった。頭への衝撃でスレイプニルは動きが止まる。


 駄目押しとばかりに冬馬伍長が飛び出し首に斬撃を放ち、俺は左側の壁を蹴り反動で久川上等兵を飛び越えて目を回しているスレイプニルの頭を蹴りつけた。


「これでトドメ!」


 一気に畳み掛けられたスレイプニルは立つことが出来ず横倒しになり、久川上等兵の戦鎚を再び頭部に食らって魔石へと変わった。


「・・・呆気なかったですね」


「草原や荒野ならこうはならんじゃろうに、哀れじゃのう」


 冬馬伍長の言に異論は無いが、その原因は偏にこの地形にある。こちらは楽なのだがスレイプニルには同情してしまいそうになる。


 その後も角での待ち伏せ戦法でサクサクとスレイプニルを倒していった。時折長い直線もあってそこで加速し突撃されたら厄介な事になっていたかもしれなかったが、蹄の音で居場所が分かるのでそれも回避出来た。


 二十六階層への渦に着いたのは二時頃だった。少し早い三時のおやつを食べてから二十六階層へ降りるとしよう。

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― 新着の感想 ―
このランダム性は本来のダンジョンの目的だった魔法能力の向上にとっては欠点なのでは? それとも元々はきちんとデザインされた階層だったのを、要望喰らいまくってキレた発案者が現在の仕様にしてしまったのかな
レアドロップはなかったのかな。サクラ肉…いやコードバン?
スレイプニルさん氾濫で他の階層に行ったら手がつけられなくなりそう
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