第三十話
翌日は女性体となって昨日と同じ検査を繰り返した。検査予約が空いている物から行ったので順番は違うが内容は一つを除いて変わらない。
今日の検査も恙無く終了し、昨日と同じく教授の部屋で結果を聞く。
「今日の結果も昨日と同じで、文句なしの健康体だ。外見も内面も完全な女の子、子供も問題なく作れるだろう」
「しませんよ、精神的には男なので恐ろしい事を言わないで下さい!」
体は女性になれても、精神は完全に男なのだ。男と子供作りなんて考えたくもない。
「妊娠中に男に戻れるのかとか、興味は尽きないが実証実験をする訳にもいかないからね。ああ、大丈夫だとは思うが異常が出ないか経過観察したい。もう一泊していってくれ」
安全基準内とはいえ放射線や磁力線、超音波や魔力を浴びているので不測の事態が起きないか様子を見るらしい。まあ大丈夫だろうが、未知のスキルと言うことで念には念をとの事だ。
夕食を済ませ、消灯時間まで暇になる。俺はスマホで近くにある2222ダンジョンを調べてみた。過疎化している2015ダンジョンとは違い、幾つもの動画がヒットする。
何気なしにその内の一つを再生する。若い(と言っても俺より年上だろう)女の子が三人のパーティーで黒鉄虫を狩っていた。
この世界でも動画配信サイトは流行っていて、ダンジョンでの狩りを撮って配信している者も居る。しかしダンジョン内外を電波で繋ぐ技術が普及していないので、ライブ配信している者はいない。
一応技術はあるそうなのだが、二十台後半の階層で取れる材料が必要らしく供給が全く追いついていない。その為貴重な代物となり、現状は軍が独占しているらしい。
ここはいつもの2015ダンジョンとは違いレアモンスターが出る階層もあるので活気がある。たまにはこういうダンジョンに潜るのも良い経験になりそうだ。
俺は父さんに検査で異常が無かった事と出来れば明日こちらのダンジョンに潜ってから帰りたい事をメールで伝えた。すぐに返事があり構わないとの事だ。
学校の方は俺の扱いについてあちこちから苦情が殺到したらしく、対処に追われているらしい。学校だけでなく教育委員会にも苦情は届いているそうで、俺の処遇は正式には決まっていない。
翌朝、教授の診察を受けて退院の事務手続きを終わらせると徒歩で2222ダンジョンへ向かう。ダンジョンが病院の近くにあるのは偶然ではなく、人気ダンジョンの近くには設備の行き届いた病院が設置されている。
これは入る人間が多いのに比例して怪我人も多い為、重傷者を迅速に治療出来るようになっているのだ。この世界はダンジョンを中心に回っていると痛感させられる。
途中物陰で着せ替え人形を発動、ダンジョン用の装備に着替える。大仰な装備ではないので目立たないので可能なのだ。もし長剣や槍装備だったら目立ってしまっただろう。




