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第二百九十三話

「あんた、何をやってるんだ!警察・・・それに救急車を呼べ!」


 改めて呼ばなくても、これだけ派手な事故が起きているのだからとっくに通報されて警察も救急車も向かって来ているだろう。それを失念する程驚き慌てているようだ。


「落ち着いて下さい。私は医者で、これは医療行為ですから」


「い、いや、胸に何かをぶっ刺すなんてどんな治療だよ!」


 冷静に諭す父さんに対し突っ込みを入れる男性。他の人達も納得していない様子だ。


「彼女は折れた肋骨が肺を傷つけ、肺の空気が胸に溜まる気胸という症状でした。そのままでは溜まった空気が肺を圧迫して呼吸が出来なくなるので、その空気を排出する必要があるのです。これはその為のドレーンという器具です」


「あっ、本当にその治療法載ってるよ」


 見ていた人の誰かが症状と治療法をスマホで調べたようだ。これで父さんへの疑惑は完全に晴れるだろう。


「それより他の人達を診察しなければ。優、次は事故を起こした車だ」


 俺と父さんは器具を持って離れた位置に停まっていた事故車に駆けつけたが、搭乗者の生存は難しいと一目で分かる惨状だった。


 車の前半分は完全に潰れ、あの中で誰かが生存しているとは到底思えない。比較的形状を保っている後部座席には誰も乗っていないようだった。


「父さん、反対車線のトラックに行こう。運転手さんを助けないと」


「そうだな、急ごう!」


 反対車線は走行車線をトラックが止まり塞いでいたが、追い越し車線は空いているので見た目では車がとおれそうだった。しかし路面には事故車の破片が散らばっていたので、通ればパンクしてしまうだろう。


「おおいっ、頼む、手伝ってくれ!」


 トラックの後方から声がしたので見てみると、トラックには乗用車が追突して潰れていた。多分車間を詰めていて減速が間に合わなかったのだろう。


「待て、私は医師だ。動かす前に診断する」


「おおっ、お医者さんか!助かる!」


 追突した車の運転席に集まっていた人達は父さんか通れるように道を開けてくれた。父さんはすぐに運転席で気絶している男性の手に触れた。


「おいおい、何をやっているんだよ。早く診断してくれよ!」


「父さんは触る事により相手の状態を診断するスキル持ちです。機械を使った精密検査よりも素早く正確にその場で診断出来ますから安心して下さい」


 あまりスキルを公言する物ではないが、今は見守る人達の不安を払拭するのが優先だろう。


「両足の複雑骨折と打ち身だな。早めに出さないと出血が危ない」


「だが、完全に潰れたコンソールに挟まってしまって・・・」


 運転手さんの両足は、衝撃で潰れたコンソールと座席に挟まり全く動かせない。この人達は何とか運転手さんを助け出そうと試行錯誤していたようだ。


「長引くとヤバいな。優、壊せるか?」


「任せて!」


 俺は着せ替え人形を発動して双剣を装備する。動かない車などブロンズゴーレムに比べれば斬りやすい的でしかない。


「足の位置はここだから、この辺りを斬れば大丈夫だな・・・はあっ!」


 足から離れた場所を斬り、着せ替え人形で双剣を戻してコンソールを剥ぐ。切れ目を入れられたコンソールは無事に剥がれ、運転手さんは救出された。

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― 新着の感想 ―
まぁ、絵面だけみたら手翳しするだけの診断なんて、「ソレ何やってんの?」感凄そうですもんね……下手したらカルト宗教の儀式的な。 そう考えると、よくあるファンタジー医療で緑や白色に発光するのは、奇跡感あっ…
この二人、DMATとか消防庁のレスキュー隊に欲しい人材 二人が居れば救助と診断、初期治療が一気に出来て、命助かる人が激増しそう
父娘の共同作業
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