第二十九話
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「お持ち帰りしたくなる男の娘・・・貴方が滝本優君ね?私が貴方の検査を担当する早芝よ」
「滝本優です。・・・不穏当な発言が聞こえたような気がするのですが、気の所為ですかね?」
この視線には覚えがある。一部の年上のお姉様方から送られる視線で、最善の対処法は「逃げるが勝ち」である。しかし、今は逃げる事は出来ない。
「細かい事は気にしないで。取り敢えずお入りなさい、詳しい話を聞きたいわ」
誘われるままに部屋へと入る。俺の方が力は強いだろうし、何かあっても最悪逃げる事位は出来るだろう・・・多分。
出された椅子に座り、教授に体質やスキルについて話す。ヘラクレス症候群に対してもかなりの興味を抱いたようだったが、やはり女性体スキルに対する食いつきは凄かった。
「今まで性別が変化するスキルは確認されていたけど、元の性別に戻れない物ばかりだったわ。それで変化した人は完全に変わっていたけど、戻れる場合どうなのか・・・徹底的に調べる必要がありそうね」
興奮する教授にせがまれ女性体になる。私服のワンピースを着た状態を選択したのだが、教授はそれにも驚いていた。
「えっ、服装まで変わるの?もう一つのスキルの効果で選択出来る?何その羨ましいスキル!」
更にヒートアップする教授を宥めて男性体に戻る。教授は入院患者が着る服を持ってきてそれを着るように言った。
「着るのは良いですけど、ここでですか?」
「私は医者で患者の裸体など見慣れている。それに男性の医者が女性患者の着替えを見れば問題だろうが、逆なのだから問題ない」
そう言われてしまえば筋は通っているので反論しにくい。なので、言われる通りこの場で着替える事にした。着せ替え人形を発動し、人形が着ていたジャージと渡された服を入れ替える。人形を消してスキルを発動すれば、一瞬で渡された服に着替える事が出来た。
「ちょっ、それは反則でしょう・・・」
「教授、検査をお願いします」
項垂れる教授に検査を頼む。気を取り直した教授は心音や呼吸音の確認を行い機嫌を直し、俺を連れて採血を行う処置室へと向かう。
採血後に採尿を行い、レントゲン、CTスキャン、MRI、魔力透過等の検査を続けて行った。魔力透過は前世に無かった検査で、弱い魔力を浴びせて体内の魔力の反応で異常を検知するというもの。
途中昼食を挟んだ検査は夕方まで続き、検査結果は続々と教授の下に届いていた。俺は教授の部屋でその結果を聞くのを待っている。
「お待たせ、やっと全ての結果が届いたよ。結論から言うと筋肉密度以外は正常だ。健康そのもので子作りも全く問題なく出来る」
突然の子作り発言に顔が赤くなるのを感じた。精液検査の際に手伝おうかと揶揄われた事を思い出してしまう。
「まあ、それは早くとも数年先だがね。君は健康的に全く問題はなく、筋肉密度を除けば普通の中学生男子だと言うことだ。明日は女性体で同じ検査をしてもらう。泊まってもらう部屋に案内しよう」
教授に案内されて病室は一人部屋で、他人に気を使わなくて良いので助かるが料金が気になってしまう。うちは裕福な方ではあるが、前世から染み付いた庶民の感覚なのだ。
食事は食堂に食べに行く事になっている。味が薄い患者向けの食事ではなく食堂の方が良いだろうとの配慮だ。夕食を天ざるうどんで済ませ、明日に備えて早寝した。




