第二百六十七話
「はあああああっ、モフモフ」
「お疲れ様、お姉ちゃん」
今上陛下との謁見を無事に終えた俺は、一度参謀本部に戻ってから家へと帰宅した。そして心労を癒す為に玉藻へと変身、尻尾を抱いてセルフアニマルセラピーを実施している。
一本の尻尾を抱いている所を学園から帰ってきた舞に発見され、もう一本は彼女が抱きしめている。兄妹で同時にモフれるので二本に増えたのは助かっている。
「それで、謁見はどんな感じだったの?」
「江戸城に着いて控えの間までは鈴置中将と一緒に行ったんだ。そこからは一人になってな」
案内人に通された謁見の間で今上陛下と対面した。頭を下げない俺に侍従が文句を言ったが、神の使いとして譲れないと突っぱねた。
今上陛下は諌めたが証拠を見せろと喚くのでステータス画面を開示し種族を見せつけた。種族名の神使を見て一発で黙った侍従は今上陛下に下がるよう言われて退場した。
俺(神使)に対して無礼を働いた彼がどんな処罰を受ける事になるのか俺は知らない。もしそれを咎められなかったとしても、今上陛下の制止を聞かなかったのだからお咎め無しとはいかないだろう。
一対一になった後は宇迦之御魂神様について聞かれ、素戔嗚尊様にもお会いした事も話し盛り上がった。
ネタとしては某イタズラ好きや知識オタクの老人もあったが言わなかった。他所様のお家(神話)の話を勝手にするのはマナー違反だろう。
そうこうしていると先程とは違う侍従が時間の終了を告げに来たので退出。鈴置中将と参謀本部に戻り終わった事を関中佐にも伝えて帰ってきた。
尚、警戒任務に就いていた事になっている滝本優に関しては任務完了の報を受けて直帰した事になっている。特段異常なしだったと言う事で報告書の提出も不要だと言われた。
「今上陛下は気さくなお方だったが、崩した口調という訳にもいかないしな。かと言って下に見られる言動も出来ないから言葉を選ぶのにも神経を使ったよ」
「うわぁ、舞には絶対に出来ない芸当ね。流石はお姉ちゃん!」
俺は舞と共に夕食の時間になるまで尻尾をモフって精神力の回復に努めるのだった。
「優、関中佐から軍の任務への協力依頼が来てるが何か聞いているか?」
夕食後の伊勢茶を飲みながらまったりしていると父さんが質問してきた。多分神炎による治療の検証ではないかと思う。
「玉藻の能力で検証する必要が出てきた物があってね。それの協力じゃないかな」
「まだ検証が必要なの?お兄ちゃんかなり検証してきたのに」
「他人の協力が必要な検証だからね。軍の協力が無いと秘匿しながら検証するのは無理なんだ」
適当な患者さんに神炎を使うという手もあるけど、患者さんの腫瘍やウィルスがいきなり消えたら騒ぎにならない訳が無い。
そしてそんな能力を持つ者が存在すると知られれば、権力者は草の根分けても術者を探し出そうとするだろう。
「出来るかどうかはまだ分からないから、検証が終わったらどんな能力か話すよ」
「ううっ、気になるよぅ」
感覚的には出来ると踏んでいるのだけど、この内容は確証無しに話さない方が良いだろう。舞には悪いが検証が終わるまで待っててもらうしかないな。
感想に「豚少将の名前に緒方を使うのはリスペクトがない」とのご意見がありました。では、どなたの名前なら良いのでしょうね。
因みに緒方さんの名前を使った理由は「らんま1/2」のパンダの体型からです。
 




