第二百六十一話
迷い家で採れた果実は野菜同様市販品の物より味がよく我が家では美味しいフルーツ食べ放題という贅沢な状況となった。
それに喜んでいたのだが、嬉しい事が起きれば嬉しくない事も起きるものだ。玉藻専用スマホに関中佐からのメッセージが入っていた。
その内容は、週明けの月曜日に今上陛下との謁見をする事となったと言うものだった。かなり急な話だが、玉藻が神の使徒との噂が広まり天皇家としても早めに会い真偽を確認したいらしい。
学園を休む事になるが、玉藻謁見の手伝いという名目で日曜日から情報部に出勤して欲しいと俺のスマホにメールが来ていた。
滝本優宛の業務連絡を玉藻のスマホに送る訳にはいかないので必要な処置なのだが、二台のスマホを確認してそれぞれに返信しなければならないのは少し面倒だ。
どの道やらなければならない事なので両方に了承する旨を返信した。両親にはこれから話すが、駄目だとは言われないだろう。
「・・・と言う訳で、日曜日から市ヶ谷に詰めて月曜日に玉藻として今上陛下に謁見してくる」
「優なら心配ないと思うが、呉れ呉れも気を付けてな」
父さんは気をつけてと言うが、謁見の作法なんて知らないし何に気をつければ良いのやら。こちらも宇迦之御魂神様の代理なので、人間の統治者相手といえども下に見られるのもマズイかもしれないし。
その辺の加減を確認する為に、迷い家に入りお社で宇迦之御魂神様に聞いてみた。迷い家から通話出来るようになっていて助かった。それを聞くために京都まで行く事になる所だったよ。
宇迦之御魂神様の判断は、下に見られる言動は禁ずるとの事だった。遠い昔に外界に降った神の末裔と現役の神徒では神徒が上の立場になるらしい。
『それでお主に文句を言うならば、妾が力を振るう故安心するがよい』
「神々は下界に干渉出来ない掟なのでは?」
『それは下界に大きな影響を齎すからじゃ。抜け道もあるし下界の崩壊を考慮せなんで良いならやりようはあるのじゃよ』
どうやら神様が干渉すると下界では洒落にならない影響が出るらしい。それに迷い家という別世界を経由すれば比較的小さな被害で干渉出来そうだと言っていた。
宇迦之御魂神様から試してみたいとウズウズする感情が伝わってきたが、ロキやオーディンみたいな事はしないで欲しい。
「今上陛下相手に上位者として振る舞うとか、今から胃が痛くなりそうだよ」
「お兄ちゃん、その心労は今正に関中佐さんが味わってると思うわよ」
舞から容赦の無い突込が炸裂した。玉藻と同一人物の優に部下に接する対応をしてくれとお願いしてるからなぁ。
「それが関中佐の職務だから仕方ない。関中佐の胃には頑張れとエールを送っておくよ」
「神使様のエールって凄くご利益ありそう。関中佐の胃痛が少しでも良くなるといいわね」
関中佐が胃痛に悩まされてる事を前提に話しているが、高い確率で悩まされてるだろう。それだけの心労をかけているという自覚はあるからな。
それに対して俺の胃痛の種は月曜日だけで終わるのだから遥かにマシだと言える。それさえ終われば楽になるのだから頑張って乗り切ろう。
・・・まさかとは思うけど、一回だけで済むよな。何度も謁見する羽目になったりとかしないよね?
作者「京都まで行かんでも、大宮の氷川様で素戔嗚尊様に聞くという手もあるだろ?」
優「あっ!」




