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第二百五十七話

「なあ、聞いたかあの話」


「ああ、宇迦之御魂神様の使徒って奴だろ?本当なのかな?」


 翌日の学園ではそこかしこで玉藻の事が噂されていた。やはり信じられないという意見もあり、信じる者と疑う者で議論になっている。


「皆あの噂ばかりね。滝本君は本当だと思う?」


「それは神の使徒の話かな?」


 林原さんも例に漏れず興味があるようだ。断定して根掘り葉掘り聞かれるのも面倒なのでお茶を濁そうと考えていたのだが、そうはいかなくなってしまった。


 勢いよく教室の扉が開かれて大きな音がした。教室内に居た全員がそれに驚き会話を止めて入口を凝視する。


「滝本様、あれは本当なのですか?軍属の滝本様ならご存知ですよね?さあ、さあ、教えて下さいまし!」


「ちょっ、はな・・・揺する・・・」


 豪快に扉を開けた鈴木さんが俺に詰め寄ると、肩を高速で揺らしながら問い詰めてきた。俺は答えたくても揺すられて上手く返事が出来ない。


「そんなに揺らしたら何も話せないでしょうに。落ち着きなさいって!」


 見兼ねた林原さんが制止してくれたので俺は振動地獄から解放される事が出来た。三半規管も強化されているので酔う事は無いと思うが、鬱陶しいので助かった。


「ああ、クラクラする。えらい目にあったな」


「それは謝罪致します。それで、狐巫女さんが神様の使徒というのは本当なのですか?」


 謝りながらも質問を続ける鈴木さん。余程気になるのだろう。周囲の生徒も注目し俺の返答を聞き逃すまいと聞き耳を立てている。


 しかし現実は無情だった。備え付けられたスピーカーからチャイムの音が流れ、開いたままになっていた扉から先生が入ってきたのだ。


「うん、変な空気だな。ホームルーム始めるから席につけ。鈴木、何でここに居るんだ?一年の教室に帰りなさい」


「今、重要な質問をしているのです。少し待って下さいまし!」


 自分の教室に戻るよう促されても聞き入れない鈴木さん。先生は質問の対象者が俺なのを見て何を聞きたがっているか悟ったようだ。


「ああ、あの件か。気になる気持ちはわかる。滝本、答えてやってくれないか」


「はい。狐巫女さんが神の使徒というのは本当です。宇迦之御魂神様からの依頼を受けてこの世界に来ています」


 はっきりと断言すると教室内がざわついた。信じていた者はそれ見ろと信じていなかった者に威張りだす。


「それが嘘じゃないという証拠はあるのかよ!」


「陸軍の真偽を見抜くスキル持ちが同席の上で確認しているから、本当だろうね。軍の中佐殿を信じられないと言うのなら証明しようがないけど」


 軍の佐官は結構偉いのだ。大っぴらに中佐の言葉を信じられないなんて一般人が言おう物なら、かなりの顰蹙を買う事になる。


「宇迦之御魂神様か・・・だから狐巫女さんなんだな」


「いつも巫女服なのは、神に仕える身だからだったのか」


 生徒達は玉藻が前例のない狐獣人な理由や巫女服を着ていた理由に結びつけ勝手に納得していった。


「鈴木、これで満足だろう。自分の教室に戻りなさい」


「あっ、そうですね。お邪魔致しました」


 聞きたい事を聞けた鈴木さんはそそくさと教室から出て行った。お付きの二人が来なかったが何かあったのだろうか。


「ほらほら、静かにしなさい。ホームルームを始めるぞ!」


 そして軍属である俺が噂を肯定した事はその日の内に学園中に知れ渡ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 神の使いであると騙ったり嘘を広めたりしたら神罰が降りる だろうから本当なんだろうな。とは思わないんでしょうか。 神様がいてもそこまではしないのかな?
[一言] え、これ良いの? 一応は軍事機密になるんじゃないの? 諸外国のバカ連中が知ったらどうにかして玉藻を拉致って自国のために働かせようってなるんじゃない? 鈴木さん、ちょっと好奇心に踊らされ過ぎじ…
[一言] 差し出がましいことは重々承知なのですが、この展開ならば前話で関中佐と認識合わせした描写入れた方が良い気がします 私のイメージですと ①優として相談したいことがある、先生含めた学校で追及されて…
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