第二十五話
「優、知り合いに検査のお願いを打診してみるが昨日の今日で検査とはならないだろう。だから今日も自由にしていなさい」
「父さん、ありがとう。今日もダンジョンに行ってくるよ」
朝食の席で今日もダンジョンに潜る事を伝える。舞は一緒に登校出来なくてお冠だが、現状で登校してもすぐ帰るだけなのでそこは仕方ない。
という訳でやって来ましたお馴染みの2015ダンジョン。一階層と二階層はサクッと進み、三階層を探索する。
三階層は二階層と同じく迷宮型で、出現する敵は黒鉄虫。体長30センチ程の黄金虫で、甲殻が鉄のように硬い事から名付けられた。
攻撃手段は突撃豚と同じく勢いをつけての突進。速度は突撃豚よりもやや早く、飛んでくる為に突撃豚よりも少々厄介な敵だ。
しかし速度が速くとも質量が突撃豚よりも軽いので攻撃を受けた時の衝撃は突撃豚と体感的に変わらない。なので突撃豚を籠手で止められるなら黒鉄虫も止められる。
早速飛んできた黒鉄虫をはたき落とす。転がった黒鉄虫を数度踏みつければ簡単に魔石へと変化した。
今回ははたき落としたが、突撃を避けると黒鉄虫は再度突撃しようと旋回する。一階層のように広いスペースがあれば良いのだが、ここのように狭いと旋回の途中で壁にぶつかり落ちるという間抜けな展開になってしまうのだ。
床に落ちた黒鉄虫は六本の脚で体勢を変えて再度飛ぼうとするが、その挙動は悲しいほど遅い。なので黒鉄虫は突撃を避けて落ちた所を踏めば楽に倒せてしまう。
一階層のようなフィールドならば自在に飛び回られて手古摺るのだが、生憎ここは迷宮フィールド。レアドロップも黒鉄虫の前翅というさして高く売れないアイテムなので寄り道せずに四階層を目指す。
四階層は洞窟型。迷宮型程ではないにしろ狭く、所々に石筍が生えている。
ここで出てくるのは孤独狼というモンスター。速さもあり爪による引っ掻きと噛みつきで襲いかかってくる。その名の通り必ず一匹でエンカウントするモンスターだ。
すぐに突進せずにこちらの様子を窺う孤独狼。まずは足を狙って噛みついてきた。横に跳んで躱すと、孤独狼は直ぐ様向きを変えて再度襲ってくる。
再び足を狙う孤独狼にカウンターで蹴りを食らわせる。鼻を潰すようにヒットした蹴りに、孤独狼は吹き飛ばされるも耐えてみせた。
すかさず追いかけて無防備な腹に蹴りを入れると魔石と毛皮に変わった。初っ端からレアドロップするとは運が良い。この毛皮は初心者向けの防具に加工されるので少し高く売れる。
五階層に行くには時間が少ないと判断した俺は四階層で孤独狼を狩りまくり、軍資金を貯めるのだった。




