第二百三十八話 とある都市にて
ここはとある場所にあるとある都市。国が崩壊し都市の統治者が新たな国の王となるべく争ってる現状で、この都市の長もその例に漏れず独裁者となる自分を夢見ていた。
そんな都市の長、アルハンゲリスクは部下を集めて緊急の会議を開いていた。独裁者を前にした部下達の表情は暗く、彼等はこれから始まる会議の内容が良いものではない事を知っているようだった。
「同志ノヴォローシスク、あの計画が失敗したと言うのは本当かね?」
「同志アルハンゲリスク、それは本当です。例の村は軍と警察により制圧されたとの事です」
ノヴォローシスクと呼ばれた中年男性は、脂汗を流し緊張しながら返答する。それに対して彼を見るアルハンゲリスクの目は冷たかった。
「確か、半島人を使っていたな。だから失敗したのではないのか?」
「は、半島人は我々よりも低能ですが、日本人に溶け込めるという利点があります。我ら白人種では浮いてしまい、彼の国での工作活動はできません」
何とか責任を回避しようと熱弁を振るうノヴォローシスク。しかしその熱弁の効果はイマイチだったようだ。
「無能ならば無能なりの使い方があるだろう。君には荷が重すぎたようだな」
「お、お待ち下さい!次は上手くやってみせます!」
必死の懇願も虚しく、ノヴォローシスクは控えていた兵に両脇から拘束されて連れ出されてしまった。それを見た他の出席者は自分に飛び火しなかった事に安堵した。
「次にオリョールよ、ロマノフの末裔の足取りは掴めたのかな?」
「現在も鋭意調査中です。なにせ当時の記録には東に逃れたとしか残っておりません。この広大な大地で行方を掴むにはかなりの時間が必要です」
アルハンゲリスクはロマノフ家の末裔を追っていた。その子孫が現在も生き延びているかは分かっていない。
しかし、もし生き残っていなくても彼らが持ち出した筈のレガリアを手に入れればロシア帝国の後継を名乗る根拠に出来る。
他にもインペリアルイースターエッグを始めとした宝物の数々は計り知れない価値があるだろう。それを欲しがらない人間などいやしない。
「ロマノフ家の黄金らしき物が市場に出ていた事は確認されています。その流れも追っていますので、今暫くの時間を頂きたく思います」
「うむ、私がロマノフの後継だと世界に知らしめる為に必要だ。必ずや探し当てるように」
「はっ、少しでも早く吉報をお届け出来るよう努力致します」
上手いこと猶予を得られたオリョールは深く頭を下げて答える。
「それでは会議を終える。そうそう、ノヴォローシスクの仕事はウリヤノフスクが引き継ぎたまえ。時が来たらすぐに目障りな島国を潰せるようにな」
それだけ言うと返事も聞かずにアルハンゲリスクは立ち去った。残った者達は厄介な仕事を任されたウリヤノフスクに同情の視線を向ける。
「使えない半島人でどうやって日本を潰せと言うのか。かと言って我らの同志ではすぐ見つかるのがオチだ。質が悪いなら量で攻めるしかないか・・・」
哀れなウリヤノフスクは、更に多くの半島人を送り込む決意を決めたのだった。そしてその試みは殆どの船が日本海軍により拿捕され失敗するものの、僅かな戦力の増援には成功するのであった。
 




