第二百三十七話
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「お兄ちゃん、空が真っ黒だよ」
「買い物に行った時は綺麗な青空だったのにな」
夕方になると急速に雲が増え続け、空は黒い雨雲で覆われてしまった。雷鳴も聞こえているので雨が降るのは間違いないだろう。
「優、念の為雨戸を閉めておこう。父さんは一階を閉めるから二階を頼む」
「お父さん、舞もお兄ちゃんを手伝う!」
俺は舞と二階に上がり、手分けして全ての部屋の窓の雨戸を閉めていった。家の中は外からの光源が失われたので暗くなっている。
程なくしてポツポツと雨が雨戸を叩く音が聞こえてきた。それは次第に大きくなっていき、外が土砂降りになっている事を示した。
「雷も頻繁に鳴っているな。こりゃ停電対策も必要か
」
この世界のエネルギーは石油や原子力ではなく魔石からの魔力を使っている。しかしそれを直に使っている訳ではなく、魔力で発電機を動かして得た電力を使っているのだ。
父さんが物置部屋から人数分の懐中電灯とLEDランタンを持ってきた。テレビでは埼玉中部に対して豪雨警報が発令されたと報じている。
「あっ、テレビが消えちゃった」
「この雷だからな。電波が乱れて受信出来なくなったのだろう」
ダンジョン素材により前世よりも強力な電波を使っているこの世界の日本だが、流石に雷様には勝てなかったようだ。
「埼玉県庁にも雷が落ちて、外壁が焦げたり崩れたりしたみたい」
スマホのネットニュースを見ていた舞が被害状況を教えてくれた。テレビは使えなくなったが、ネットで情報が入るのはありがたい。
「あっ!」
「停電したかな?」
電灯が消え、空調も止まってしまった。父さんは懐中電灯を点けてブレーカーを見に行った。
「ブレーカーは落ちてなかった。この辺一帯が停電したみたいだな」
父さんはブレーカーを確認ついでに周囲の様子を確認したようだ。辺り一面の灯りが消えて真っ暗になっていたそうなので、結構広い範囲で停電したのかもしれない。
「冷蔵庫や冷凍庫はある程度保温効果があるから良いけど、このままじゃ蒸し風呂になるわね」
「かと言って換気も出来ないしな。換気扇は動かないし、窓なんて開けたら部屋の中が水浸しだ」
早くに復旧してくれたら良いけど、時間が掛かったらサウナ状態になってしまう。普通なら電気が復旧するまで待つしか無いのだけど、俺には奥の手があるのだ。
「父さん、迷い家に避難しよう。迷い家なら停電なんて関係ない」
「その手があったか。優、頼めるか?」
俺が言い出した事ので異存などある筈もない。女性体と妖狐化を発動して玉藻になると、すぐに迷い家の入口を開ける。
外の時間とリンクする迷い家も夜になっていたが、空には雲一つなく満天の星空が広がっていた。
「母さん、食材を持って来てこっちで食べてしまおう」
「そうね、明るいしその方が楽だわ」
買ってきていた食材を持って迷い家に入る。まさかこんな形で迷い家を使うとは思わなかったな。
「優、念の為冷蔵庫と冷凍庫の食材もこっちに保管したいがよいか?」
「そうだね。停電が長引くかもしれないし、その方が無難だね」
母さんが天婦羅を揚げている間に俺と父さんで移送を行った。舞はお皿を用意して揚がった天婦羅を運ぶ役目を担っている。
全ての食材を揚げると、一通りの具材を乗せた皿をお社に奉納した。本当に便利なスキルをありがとうございます!




