第二十三話
母屋を出て赤い鳥居に向かう。複数の真っ赤な鳥居が並ぶ風景はどこか神聖な雰囲気を醸し出し、ここが神域の一部であると感覚的に分らせる。
連なる鳥居が導く道の端を歩きお社に近づく。前世で参道の真ん中は神仏の通り道だと何かで読んだ。この世界でも同じかは知らないが、違っていたとしても損にはならないだろう。
小さなお社には鈴も賽銭箱も無かった。取り敢えず合掌して拝んでおく。
『良う参った。これは留守電のような物、こちらからの一方的な言伝である。そなたには与えた力にてダンジョンを攻略してほしい。迷い家の物も畑の物も好きに使うがよい。作物は収穫してもすぐに成長する。期待しておるぞ』
頭の中に女性の声でメッセージが響いた。恐らく俺が居た世界に救援を頼んだ女神様なのだろう。
『そうそう、女体化は妾の趣味ではないぞえ。空間系のスキルを与えるには妖狐の迷い家以外は魂のキャパが足りなかったでな。女体化させての妖狐化は苦肉の策じゃ』
・・・終わったと思ったら、追加でメッセージが入っていた。TSや狐巫女さんが女神様の趣味だと誤解されていると思ったのだろうか。
釈明する辺り、そういう趣味があるのではないかと疑ってしまうのは俺の性格が悪いからか。
ともあれ、この空間の物を自由に使う許可は得たので気兼ねなく使う事が出来る。裏の畑で真っ赤なトマトを一つもぐ。母屋に入り軽く洗って齧ってみた。
甘味と酸味が混じった果汁が口の中に溢れる。そのまま齧るだけで充分に美味しいトマトを一気に完食した。
「米と調味料を備蓄して一階層の肉も備蓄すれば、かなりの期間ここに籠もれるぞ」
予想以上に快適な迷い家に嬉しさと戸惑いを感じた。これはもう、国のお偉いさんに何とか接触して公表の方法や時期を丸投げするか。
アメリカやヨーロッパ、中国との兼ね合いもあるだろうし、素人の俺が頭を悩ませるよりプロに投げた方が良いだろう。
問題はどうやってお偉いさんに接触するかだが、世界でも初か希少例となる狐獣人の存在をチラチラと見せればあちらから探して来るだろう。
投げるにしても能力の高さは証明した方が良いだろうから、ある程度の深さまで潜っておく必要がある。潜った実績はダンジョンに潜るとステータスの二画面目が追加され、そこに記載される。それを偽造する手立ては無いので、その画面を表示させる事で各国の最大到達階層の証明に使われている。
その画面に第〇〇ダンジョン〇〇階層と表示されるので、どこのダンジョンが何番のダンジョンか判明したという経緯がある。
世界中に現れたダンジョンは1万余り。全世界で見つけたダンジョンの番号を記録して照合し、抜け番が無くなった事で全てのダンジョンが発見されたと判断されたのだ。
俺は迷い家から出て男に戻ると、適当に突撃豚を狩り魔石を売って帰った。明日は二階層に挑んでみよう。




