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第二百二十七話 情報部にて

「中佐、おかえりなさい。表情が暗いですね?」


 玉藻が帰り、山寺中佐と関中佐もそれぞれの部署に戻って来た。情報部に戻った関中佐は部下に出迎えられたが、浮かない表情の関中佐に部下達は勝手な推測を始めた。


「水中村の件で狐巫女さんが来たと聞きましたが、非協力的だったのですか?」


「いや、向こうから態々来てるんだ。協力に金銭とかの条件を付けられたのでは?」


「金銭、か。それならどんなに楽だった事やら」


 あらゆる情報を集めるのが仕事の情報部では情報提供者が見返りを求めてくるというケースに当たる事もあるのだ。その程度ならこんなに胃を痛めないと関中佐はため息をついた。


「我々陸軍は狐巫女・・・玉藻様を全面的に支援する事となった。情報の秘匿を頼まれたから、それが代償と言えば代償かな」


「軍が支援、ですか?軍に所属させるのではなく?」


 稀有な狐獣人であり、現在確認された中では魔法を使える唯一の獣人だ。軍に取り込むなら分かるが、それをせずに支援するとはどういう事かと部員達は訝しがった。


「玉藻様は依頼を受けて動いているからな。軍人にして行動を制限させる訳にはいかないのだよ」


「依頼って、陸軍の要請を蹴る程の相手からですか。まさか海軍・・・いや、中佐が様付けをしてるという事はまさか皇族?」


 部員の推測に関中佐は弱々しく首を横に振る。随分と参っている様子の中佐に、部員達は余程の事かと身構えた。


「残念ながら外れだ。彼女に依頼を出したのは、宇迦之御魂神様だよ」


 予想外という言葉ではとても足りない予想外な存在の名が出た事で、情報部内の時間が凍りついた。いち早く思考停止状態から戻った部員が質問する。


「中佐、そんな畏れ多い冗談は止めて下さいよ。神様が人に依頼するなんてあるはず無いじゃないですか。それで、本当は誰なんですか?」


「冗談だったらどんなに良かったかな。山寺も嘘ではないと認めている。玉藻様は神に使命を下された使徒だったんだよ」


 山寺中佐が嘘を見抜くスキルを所持していて、嘘をつくような人物ではない事を情報部員は全員知っていた。


「氷川神社で玉藻様が消えたという噂があっただろ、あの時は素戔嗚様に呼ばれて神域に行っていたらしい」


「神様に呼ばれるって、本当に使徒様なんですか・・・」


 部員達に対して巫山戯た言動をする事もある関中佐だが、神々の名まで出して巫山戯るとは部員達も思っていない。


 大体、嘘だとしたら山寺中佐に確認をとればすぐに判明するのだ。部員達を遇らう為だけにそんな嘘をつく人ではないという信頼もあった。


「尚、玉藻様は特殊なスキルを所持していて、力をお借り出来れば到達階層の更新は確実となる。それが知られれば各国が獲得に動くだろう。情報の秘匿には一層力を入れてほしい」


「ちょっと待って下さいよ中佐、狐巫女さんが神の使徒ってだけで思考が止まりかけてるんですから」


「気持ちは分かる、だから俺も胃が痛いんだ。だがな、俺は使徒様との連絡役まで仰せつかったんだぞ、心労はお前らの比じゃないわ!」


 いきなり降って湧いた神の使徒騒動。前代未聞の事態に、何に対してどんな予防をするべきかと部員達は頭を抱えた。


「まあ、本格的に動くのは少し先になるだろう、水中村の件を終わらせるのが先だからな。しかし覚悟はしておいてくれよ」


 この時、情報部員全員は心の中で「使徒様の対応は中佐に全てお任せします!」と叫んだのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 交換できる胃を用意しておかないといけませんなぁ
[一言] 情報部員、巻き込まれ被害(笑) いや全員に周知徹底しておかないとダメなので当然の行動なんですけどね しかし神様の使徒と分かった以上は優君、いずれ皇族との面談も必要になるんじゃない?
[一言] 一度中佐を含む国の人間を2~3人宇迦之御魂神様に目通りさせた方がいいのでは?大人数じゃなければ許可が下りるかもしれないし今後がやりやすくなりそうだからね。国の人間だと信用が置けないなら軍部に…
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