第二百二十二話
「その、差支え無ければ依頼者と内容を教えて貰う事は出来るかな?ここに居る者以外には他言しないと誓おう」
すかさず関中佐が質問してきた。軍の威光を笠にきて無理矢理聞き出そうとしないのが中佐らしい。話しても支障は無いし、その前に信じられるかどうかという内容なのでそのまま話す事にする。
「依頼された内容はダンジョンの攻略を進める事じゃ。そして依頼主の名は宇迦之御魂神様じゃよ」
依頼主の名を告げると将官の三人と関中佐は一斉にもう一人の中佐を見た。監査部の部長と紹介された山寺中佐は顔を真っ青にして何度も首を縦に振っている。
察するに、山寺中佐は虚言を見抜くスキルの持ち主なのだろう。そして俺が嘘をついた時には何かしらの合図を送る手筈だったのだと思う。
しかし、神様からの依頼などというぶっ飛び過ぎる内容を聞かされ俺にバレる事なんて頭から消し飛んで確認をしたと。
ガン見された山寺中佐もあまりの内容が嘘ではない事に動揺して、本当だと伝える為に派手に首肯してしまったのだろう。
「そんなにガン見しておっては嘘を見抜くスキル持ちじゃと喧伝しているような物じゃ。部外者の妾にそのような情報を与えてどうするのじゃ」
将官の三人はまだしも、軍の情報を司る情報部の長までそれはちょっとマズいのではないかな。
「いや、まさか神様からの依頼を受けた御方がこの世に存在するなど想定を超え過ぎておりますよ」
「その通りに御座います。帝国の長き歴史の中でも神のお言葉を賜った存在はおりませぬ」
「それに、神の御遣い様に対して隠し事など出来ませぬ故問題ありませぬ」
これまでも丁寧な対応をされていたが、今の暴露によって将官の三人もこちらを上位者として接する口調になっていた。ここは前世と違いダンジョンやらスキルがある世界、神仏に対する信仰は深いのである意味当然だった。
「そうそう、妾の前にも神の依頼を受けた者はおった筈じゃよ。時代や人数は聞かなんだが、前任者は上手く成果を出せなかった故に妾が派遣されたという事じゃ」
「神々は我ら帝国を見守って下さっておられたのですな。これは大々的に公布して万民にこの喜びを分かちたい所ですが・・・」
中将が言葉を切り俺を見る。それを知らせるとすると玉藻が神の使徒だと軍が公式に認める事になる。それをやっても良いか迷っているのだろう。
「例えそれを公布したとして、臣民がそれを信じるかのぅ?お主らは山寺中佐のお墨付きで信じたが、それが無ければ信じられまいて」
「そうですな、玉藻様の仰られる通り臣民に信じさせるのは難しいと言わざるを得ません」
情報の専門家である関中佐も俺の意見に同意した。中将はそれを聞いて公表する事を諦めたようだ。
「そうだな、今日は玉藻様の事を知り協力関係を築けたのだ。それ以上を望むのは欲張り過ぎというものか」
「そうですな。玉藻様、出来れば今後連絡を取れるようにしたいと思うのですが宜しいでしょうか?担当は関中佐の情報部に行わせます」
「それは構わぬよ。妾としても軍に願い事をするやもしれぬしのぅ」
関中佐以外の四人は嬉しそうな顔をしていたが、肝心の関中佐だけはなんとも言えない表情をしていた。使徒とのパイプ役と言えば名誉ある大役だが、対応を間違えればどんな事態になるか想像もつかないのだ。
しかし、事情を知り情報を統括する関中佐はその役目に最も適しているのは間違いない事実。干芋とバナナチップスを沢山差し入れするので頑張って!




