第二十二話
翌日は朝からダンジョンに籠もり先送りした迷い家の検証を行う。途中コンビニでおにぎりと飲み物も買い準備は万端だ。
昨日と同様一階層で最短ルートを外れ、人が来ない場所を目指す。途中襲ってきた突撃豚を昨日と違う倒し方で倒す。
まずは突進してきた突撃豚を真正面から受け止めた。キツイようなら流すつもりだったが、衝撃は感じたものの思ったよりも楽に受け止められたので押さえた頭を捻って倒した。
数匹倒した辺りでかなり離れる事が出来たので、女性体から妖狐化を発動した。急に鋭くなる五感に違和感を感じるが、これは慣れるしかないだろう。
こちらに走ってくる突撃豚が見えたので狐火を発動。ぶつけようと思ったが留まる。代わりに突撃豚の突進コース上に迷い家を発動してみた。
迷い家の入口となる光の四角形が形成される。この入口は俺と俺が許可した者しか通さない。ならば許可しない者の前に出せば壁になるのでは、と思ったのだ。
結果は俺が思った通りだった。光の壁に衝突した突撃豚は衝撃で目を回しひっくり返った。踵落としで止めを刺してドロップ品の魔石をリュックに放り込む。
空歩で自在に空中を歩き、狐火で遠距離攻撃を叩き込み、接近されても迷い家で鉄壁の守りを行う。妖狐さん、ちょっと反則的な能力してませんかね。
光の壁がどれだけの強度を持つかは要検証だが、そう簡単に壊れるような代物ではあるまい。そう考えつつ光の壁を通り抜けた。
「これはまた、のんびりと日本茶でも飲みたくなる風景だな」
迷い家に足を踏み入れた俺が見たものは、二階建ての藁葺き屋根の日本家屋と、その隣の赤い鳥居が数本並んだ奥にある小さなお社だった。
家の裏には小川でも流れているのか涼し気な水音が聞こえ、ダンジョンでモンスターと殺し合っていた事を忘れさせてくれる。
まずは藁葺き屋根の家を探索してみよう。引き戸を引いて土間に入り靴を脱ぐ。中は古い日本家屋そのもので洋間は無く全室畳敷きだった。
しかし台所や風呂場、お手洗いは最新式の物が取り入れられていてここで生活しても何ら不都合は無さそうだ。釜場や風呂が薪を燃やす方式じゃなくて助かった。
窓から家の裏手を見ると、やはり小川が流れていた。家と小川の間には畑が作られていて、多種多様な作物が実をつけていた。
「ダンジョンで肉を取って迷い家で野菜を収穫。完全にダンジョンで生活出来るな」
至れり尽くせりの待遇である。それだけ神様はダンジョン攻略が進む事を望んでいるのだろう。ここまでしてもらったからには、期待に応えなければ男が廃る。
「・・・あっ、今は男じゃないわ」
なんて半ば現実逃避している場合ではない。増々この能力をいつどうやって知らしめるかか難しくなった。
「御稲荷さんにお参りしたら、良い知恵を授けてくれないかな」
困った時の神頼みとはよく言ったものである。俺は考えるのを放棄して土間へと歩くのだった。




