第二十一話
時間があるので武器を売る店も覗いてみる。今買うには資金が足りないが、何れは武器も揃えていきたい。
普通ならばメイン武器を一つに予備として短剣等の大きくない武器を持つ。武器が一つしか無ければ戦闘中破損した時に丸腰になってしまう。
しかし、大きい武器を二つ持っていくにはスペース的にも重量的にも無理がある。なので二つ目の武器には軽くて嵩張らない手軽な物を持つのが常識となっていた。
だが、俺にはそれが当て嵌まらない。男性体で三種類、女性体で三種類の計六種類を大きさや重さを考慮せずに持ち込めるのだ。
つくづく着せ替え人形はチートだと実感する。これに迷い家まであるのだから、この世界の神様は俺にどれだけ期待しているのやら。
「だから、ダンジョン産の剣だと言ってるだろうが。それがこんなに安いなんて阿漕にも程がある!」
「ダンジョン産なんてお前がそう言っているだけだろう?ギルドの鑑定書が無い以上正体不明の剣として扱うしか無い」
騒がしい声に目を向けると、ダンジョンの宝箱から剣を入手した探索者がそれを売りに来たようだ。しかし売値が気に食わないようで文句をつけている。
「マイナス効果が付いてるかもしれない剣なんて、買うのはかなりの賭けなんだ。嫌ならギルドで売れば良いだろ」
「ちっ、金輪際こんな店使わねえからな!」
探索者は捨て台詞を吐くと剣を持って出ていった。周囲の人からは店員さんに同情の眼差しが送られている。
武器防具や道具を鑑定するスキルはあるし、魔道具も存在する。魔道具は各ギルドに配置されていて、買い取りの際や鑑定依頼を受けた際に使用される。
しかし一般の販売店で高価な魔道具を置いている事はほぼ無く、鑑定スキル持ちなど希少なので良い条件の大手企業や公的機関に取られてしまう。
ギルド発行の鑑定書があれば性能に応じた買い取りをしてくれるのだが、その鑑定書の発行にも手数料がかかる。なので一部の探索者は鑑定書無しで売りつけようとする。
気を取り直して武器を眺める。片手剣に盾というのがオーソドックスな装備だが、力が強い俺ならば大剣や大斧、ポールウェポンや大盾も有効だ。
大剣でガンガン攻めて、防御は換装した大盾二枚で鉄壁のガードなんて最高だろう。まあ、それを実行するにはかなりの額を貯める必要があるのだが。
片手剣や槍といったオーソドックスな武器よりも、大剣や大斧のような尖った武器の方が値段が高い。使う人が少ないので受注生産となる場合が多く、その為高額になる。
多分五階層までは蹴りで行けるだろう。そこから金を貯めて少しずつ武器を揃えていこう。そう心の中で誓いショッピングモールを出ようとした俺は、大事な事を思い出し踵を返した。
戦利品を収納するリュックサック、買っておかないとまたジャージを風呂敷にする事になる。思い出したのが電車に乗る前で本当に良かったと胸を撫で下ろした。




