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第二百七話 とある探索者パーティー

「ほれ、こっちだ!」


 激昂する青毛熊の腕が切りつけられる。しかし短剣による速度重視の攻撃は青毛熊にかすり傷程度のダメージしか与えない。


「グウッ、グワァー」


 一撃与えれば勝てる。そう確信できる弱そうな相手に対してその一撃を与えられない上、どうという事もない攻撃ながら一方的に攻撃されているという苛立ちが青毛熊の攻撃を荒くさせる。


「そうそう、こっちだこっち!」


 短剣で切り付けた男が挑発を繰り返す。頭に血が上った青毛熊は易易とそれに乗せられてしまった。


「背中がお留守ですよっ、と。これで終わりだ!」


 短剣男に気を取られていた青毛熊は、背後に回り込んだ男に気付かなかった。そして背中から心臓に突き立てられた片手剣は青毛熊を魔石に変える。


「こんな物か。しかし村長様々だよな。いつもと同じように狩りをしても金は多く貰えるんだから」


「全くだ。こんな美味しい仕事、余所者にやらせてた前村長は大罪人だな」


 彼らは村役場からの要請で1999ダンジョンの間引きを行っていた。前村長までは軍に依頼をしていたのだが、村長が交代し地元の探索者に依頼する事になっていた。


 このダンジョンの七階層ではゴブリンの代わりにレイスというモンスターが現れる。奴らは霊体である為物理攻撃は効かず、七階層以降に行くなら魔法スキル持ちが必要となるのだ。


 歴代村長は万が一を考え軍に間引きを要請していたのだが、去年から就任した村長は軍に渡す予算を地元の探索者に還元すべきと主張。軍への依頼をしなくなった。


 軍としても貴重な魔法スキル持ちを派遣せずに済むならその方が良い。村が不必要と言っている以上拘る理由もなく派遣は取りやめとなった。


「なあ、物理無効の強敵といっても魔法なら一発なんだろ。魔石も高く売れるだろうし行かないか?」


「そうだな、依頼では六階層までのモンスターを出来るだけ間引くとなっているが倒せるのだから構わないだろう」


 こうして間引きを依頼されたパーティーは七階層に足を踏み入れた。


「さて、どこに居るのか・・・おっ、居たぞ!」


 渦から出たパーティーは空中に浮かぶ半透明な人型の物体を見付けた。それもパーティーを視認したようで、人が走る位の速さで飛んできた。


「喰らえ、ファイヤーボール!」


 パーティーの一人が腕をレイスに向けて叫ぶ。掌に生まれたバレーボール大の火の玉はレイスに向かって飛び、腹部に直撃した。


「何だ、呆気ないな」


「まさか一発で沈むと思わなかった。何が強敵だ、雑魚じゃないか」


 調子に乗った彼らは七階層を歩きレイスを探した。見付けたレイスは接近される前に魔法で倒し魔石を集めていく。


「かなり集まったし、そろそろ帰るか」


「そうだな、今日の配分は楽しみだ」


 かなり奥まで来ていたパーティーは戻る渦に向かって歩き出す。途中で遭遇したレイスも倒していたのだが、突然異変が訪れた。


「おい、何をやっている。早く魔法を撃てよ」


「ちょっと待て、魔法が出ない。魔力切れかもしれない」


 この世界では魔力の総量や残量が数値で表されたりしない。どれだけ撃てるかは各自が感覚で把握し管理するしかないのだ。


 しかし有頂天になっていた魔法スキル持ちはそれを怠った。このパーティーで唯一魔法攻撃を出来た者が役立たずとなったのだ。


「おっ、おい、それじゃどうするんだよ!」


「どうするって、逃げるしかないだろ!」


 物理攻撃無効のレイスに対して魔法攻撃を失ったパーティーが勝てる術は無い。彼らは全滅するか逃げるかしか選択肢が無かったのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 攻撃魔法持ちってこの世界じゃかなりの勝ち組なのになんでこんな残念なんだ……
[一言] こんなポカミスするってことは元々実力的には大したことのないチームかな? それでも6階層までで止めておけば問題なかったんだろうけど 欲に駆られて失敗する典型だなぁ
[気になる点] この世界のダンジョン管理って基礎自治体の方なんですね
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