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第二百一話

「二人共、一つ大事な事を忘れていないかな?」


 暫く二人の言い合いを聞いていた冬馬伍長が口を挟んだ。二人は発言を止めて冬馬伍長に注目する。


「優ちゃんはソロで二十一階層まで踏破している。優ちゃんは一人で跳び百足を倒せる、そうだね?」


「はい、倒せます」


 井上上等兵と久川上等兵は揃って俺を見つめる。資料で知らされている筈だが、数字で見ていただけなので実感は無かったのだろう。


「では一匹倒してみせて貰えないか?」


「了解しました。全力で倒します」


 これまで手を抜いてきた訳では無いが、二人に合わせて戦ってきた。着せ替え人形は複数の武器を自在に持ち替えるのが特徴だ。それはソロでの戦闘において大きな効果を発揮する。


 パーティー戦でも使えなくはないが、いきなり武器を切り替えるのは共闘するメンバーが併せるのも難しい。練習を重ねてコンビネーションを確立させた上で使うようにしなければ逆効果になってしまう。


 冬馬伍長はそれに気付いていたのか、跳び百足を一人で倒せと言ってきた。真意は分からないが無理な注文という訳ではないし受ける事にする。


 深い森に覆われた十四階層。先には進まずに戻る渦の付近で跳び百足を探す。しかし本格的に探す必要は無く奴は頭上から襲って来た。


「散開、二人は一旦下がれ。優ちゃん、いけるか?」


「問題ありません。このまま撃破します」


 狙われた冬馬伍長を庇い大盾で跳び百足の大顎を受ける。シールドバッシュで跳び百足を弾き対峙した。


 半身を上げて上から襲う跳び百足。再度大盾で止めるが下半身を巻き付けようとしてきた。バックステップで躱すと同時に双剣に変えて足を数本切り落とす。


 思わぬ痛みに怯んだ隙に斧槍に持ち替えると柄を伸ばし、上段から振り下ろして頭に打ち付けた。斧の部分が綺麗にヒットし、跳び百足は魔石へと変わった。


「す、凄い。私達が苦戦して倒す跳び百足をあんな簡単に・・・」


「二十階層を越えられるんだ、跳び百足なんて通過点だろうさ」


 驚き呟いた井上上等兵とは対照的に淡々と話す冬馬伍長。この結果は予測していたのだろう。


「率直に言って私達は足手纏いだろう。それを承知の上で聞く。優ちゃんにパーティーは必要かな?正直に答えて欲しい」


 質問に対する返答は今後を大きく左右するかもしれない。これが冬馬伍長の個人的な質問なのか上から指示されて聞いた質問なのか分からない。


「必要、ですね」


 俺の端的な答えに対して井上上等兵と久川上等兵は目を見開き驚きを顕にした。力の差を見せつけられたにも関わらず必要と言われると思わなかっただろう。


「確かに私は二十一階層まで到達していますし、倒すだけならもう少し先のモンスターも倒せるでしょう。しかし、必ず行き詰まります」


「それは補給や休息でかな?それならば軍が万全のバックアップをしてくれると思うが」


 冬馬伍長の問に対して俺は首を横に振る。それなら迷い家で解決出来るのだ。


「複数人数で戦えば安心感が違います。フォローしてくれる仲間が居るというだけで心労はかなり低減します。それに、敵は単体とは限りません」


「複数で襲うのは群れ狼だけだろう。そこもクリアしているのでは?」


 冬馬伍長による再度の問いにも首を横に振った。そして思う所を話す。


「確かに現状判明しているモンスターではそうです。しかし更に先はどうでしょう?孤独狼が十六階層で群れ狼になった事を考えれば複数で襲うモンスターが居ると考えるのが妥当でしょう」


 最前線を目指すのではなく、その先を見据える。そんな発言に三人は言葉もなく立ち尽くすのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 優君の目的はダンジョンの最奥までたどり着いてダンジョンそのものを停止させることですからね 世界中の誰も考えていないことを目指しているわけですから、それは目線が違ってくるというものです
[一言] あ~、うん。たしかにいつまでもモンスターが単独行動ばかりとは限らんよね ぱっと思いつくだけでもゴブリンとかオーク辺りは本来なら群れで活動してそうなイメージの奴らだし
[一言] 敵はもっと強くなる。 群れで出てくるようになる。 このくらいは想定して当然だと思うんですが。 なにか見落としてたかな……。
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