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第百八十七話

 二日目は班ごとの自由行動となる。これといった制限はなく、今日の宿となる奈良のホテルに決められた時間までに到着すれば良い。


 行き先も交通手段も班により様々だ。大体は公共交通機関を使用するが、大きな家の子女とその取り巻きで構成された班は家で用意した車両を使ったりする。


 俺は普通に京都駅まで歩き、国鉄の奈良線に乗り最寄り駅に到着した。楼門、外拝殿と拝観し本殿に向かう。平日の午前中だというのに人が多く、ここに玉藻が姿を現したら間違いなく騒ぎになるだろう。


 人前に姿を現すのは構わないのだが、関東でしか目撃されていない玉藻が学園の修学旅行の日に京都に現れたとなれば関連性を疑う者が出るかもしれない。


 人が少ない場所を探して歩を進める。玉山稲荷社から祭場を通り千本鳥居に抜ける。真っ赤な鳥居が続く圧倒される道を歩く。


 中程まで来ると明らかに空気が変わったのが感じられた。先程までちらほらといた人の気配は感じられない。


 これは宇迦之御魂大神様のお誘いだろうか。女性体を発動し妖狐化も発動する。その効果はすぐに現れた。


 真紅の鳥居のトンネルから二人の巫女さんが現れたのだ。その頭には俺と同じ狐耳がついていて、お尻にはフサフサとした尻尾が揺れている。


 顔には狐のお面を被っているので表情はわからない。二人は俺の前で深々と頭を下げた。


「玉藻様、お迎えに参りました。どうぞこちらに」


「了解しました。案内をお願いします」


 一人が先導し、一人が後ろについて狐巫女さんに挟まれる形で歩く。鳥居の列が途切れると見事なお社が姿を現した。


 草履を脱いで中に入り廊下を歩く。時折案内役の狐巫女さんと同じ狐巫女さんとすれ違うが道を開け頭を下げて俺達が通過するまで立ち止まっていた。


「こちらになります。お入りください」


 とある障子戸の前で先導役の狐巫女さんが脇にそれ、障子戸を開けてくれた。俺が部屋に入ると障子戸はすぐに閉められた。


 縦長の部屋にポツンと置かれた座布団一枚。そこに座れという事なのだろう。正座してすぐに正面の高座に強烈な気配が現れた。


「よう来られたのう、こうして会える日を楽しみにしておったぞ」


「訪問が遅くなってしまった事、申し訳なく思います」


 そこに現れた存在、宇迦之御魂大神様に伏してお答えする。神気は素戔嗚尊様で経験済みだが自然と頭が下がってしまう。


「頭を上げよ。まずは転生とダンジョン探索の任を受けてくれた事、礼を申す」


「こちらこそ、あのまま死すべき私に第二の人生を下さり感謝の念しかありません」


 二度目の人生を与えてくれて、最高の家族に会わせてくれた。どれだけ感謝しても感謝しきれない。


「それに下界の料理の奉納。妾もだが父上と母上も喜ばれておられた」


「それも頂いたスキルのお陰に御座います。喜んでいただけたのであれば幸いです」


「そうそう、そのスキルについて説明しておこうと思ったのじゃ」


 どうやらここからが招かれた主題のようだ。俺は居住まいを正し一言一句聞き逃さぬよう気合を入れ直した。

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― 新着の感想 ―
奈良線稲荷駅を降りて目の前が伏見稲荷です。市バスに乗り換える必要はありません。 まあ、別世界なので駅の位置とか違うのかもですが。
[一言] あれ?てっきり稲荷ずしとか手土産を持っていくのかと思ってたけど いつも迷い家で奉納しているから今回は必要なかろうという判断かな
[気になる点] あれ、玉藻じゃないと入れなかったの!?
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