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第百七十八話

百七十六話にて女性パーティーの上等兵が井川となっていましたが井上の間違いでした。

 一同は三回も分厚い鋼鉄製扉を抜けてダンジョンの渦に移動した。ここの警備は他のダンジョンと比べ物にならない程厳重だった。


「浅い階層では力試しにもならないでしょう。六階層まで最短のルートで進みましょう」


 隊列としては大盾持ちの俺が先頭を歩き、次に冬馬伍長と井上上等兵が並ぶ。その後ろに久川上等兵が続き、最後に関中佐と石丸さんを囲った男性パーティーとなる。


 突撃豚と蹴撃兎、黒鉄虫は大盾で止めた後大盾を叩きつけるだけで魔石へと変わる。孤独狼も大盾で受けて蹴りを入れれば片付いた。


「私達、完全に必要ないわね」


「まだ四階層ですから」


 冬馬伍長のぼやきに律儀に返答する。こちとらソロで二十階層を超えているのだ。この辺りの敵に苦戦などする筈もない。


 奇襲ヘビは襲われる前に久川上等兵に察知され、冬馬伍長と井上上等兵が代わり番こに倒していった。余りにも暇そうなので二人に出番を譲ったのだ。


「滝本、ナイス!」


「やあっ!」


 六階層の青毛熊戦。こいつは教科書通りの戦いをするだけで簡単に討伐できた。青毛熊の攻撃を俺が大盾で受け、この影から井上上等兵が飛び出し両足を切る。


 傷により体重を支えきれずに体勢を崩した所で冬馬伍長が位置が低くなった首を切り飛ばす。これが面白い程に嵌り、もはや討伐ではなく作業になりつつある。


「攻撃を受けてくれるから目茶苦茶楽ね」


「冬馬伍長、時々受けそこねて負傷しますからね」


 順調に五匹の青毛熊を狩った所で昼休憩をとる事になった。女性パーティーの昼食は久川さんが背負うリュックから取り出し、男性パーティーと関中佐、石丸さんの分は男性パーティーの荷物担当の人が取り出して配っている。


 俺は自分のリュックから母さんに作って貰った特製オークカツサンドを頬張る。注目を浴びているような気がするが、俺の分しかないので気の所為という事にする。


「滝本君が軍と合同で戦えるかはもう結論が出ていると思いますが、どうです?」


 昼食後、関中佐が石丸さんにまだ続けるのかと問うた。もう先に進む必要はない、と言うか次に行きたくないと言外に言っている。


「そうですな。失礼を承知で言わせてもらうならば滝本君は女性兵より強いと感じています。しかし、それは滝本君が特殊なスキルを得た者だからです。普通の中学生を軍属にする事に賛同する要因にはなりません」


「それを言い出したら今日の検証自体が無意味な行為になるのですが、文部省は最初から否定を前提でこの検証に同意したと?」


 石丸さんの答えに関中佐は低い声で問いを返す。初めから認めるつもりがなく陸軍の顔を立てる為だけにこの検証を行ったと言われれば怒るのは当たり前だ。


「いや、そういう訳では・・・しかし、検証の対象である滝本君を基準に考えろというのは無理が有りすぎる。皆が彼のように強い訳ではあるまい」


「では、彼が軍属になる事には支障がないと言う事ですな」


 石丸さんは関中佐の意外な返しに答えを返せずにいた。既にダンジョンに潜っているので学生をダンジョンに行かせるな!とも言えないし、自発的に軍に志望しているのだから止める権利もない。


 しかし一人を認めてしまえば前例となり更に認める理由となってしまう。石丸さんは「はい」とも「いいえ」とも言えなくなってしまったのだ。


「関中佐、もう石丸さんが答えられる範囲を超えているでしょう。青毛熊も寄ってきますし、戻りませんか?」


 俺と女性パーティーは二人が言い争っている間に襲ってきた青毛熊を倒していたのだ。


「・・・そうだな。今日は終わりにしよう」


 こうして検証によりどのような判断が下されるかは後日となった。負かされた石丸さん、次の人事で左遷かな。

七階層に行かなかった理由・ゴブリンが臭いから。

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― 新着の感想 ―
[一言] 負かされた石丸さん。 いや、負かされたのではなく、現実が非情だっただけかと。彼は悪くない。 軍が嫌な切り返しとしては、「滝本君はオーケー。よし、次からも“滝本君と同じぐらいの探索者”には許…
[一言] 結局タンク役しかしなかったね 斧槍を使ったアタッカー能力を見せるのはまたの機会かな
[気になる点] なぜ元となったダンジョンの製作者は10階層毎のワープを造らなかったのか、どう考えても元の世界で女性からの批判殺到しただろ 何が言いたいかというとこのお姉さんPTぐらいは迷い家でお風呂…
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