第百七十二話
「優ちゃんおかえりなさい。ちょっと遅かったけど何かあったのかしら?」
「母さんただいま。ちょっと予想外の出来事がね。悪い事じゃないから安心して」
予測外の出来事と聞いて心配そうな表情をした母さんを安心させる為にすぐ補足を入れる。詳しくは昼食後に話す事にしてまずはお昼ご飯だ。
少し晩くなったが待ってくれていた家族と一緒に母さん特製突撃牛カレーを食べる。夕食はこれにオークカツを乗せたカツカレーとなる予定だ。
「それで、何があったんだ?」
「実は宝箱を発見したんだ。それでアイテム鑑定を受けていたから少し遅くなったんだ」
父さんの問いに答えると、両親と舞はかなり驚いた。宝箱は極偶に突然ランダムで現れるらしい。早々見つかる物ではないのだ。
「お兄ちゃん、宝箱には何が入っていたの?」
「それが・・・これだったんだ」
俺はリュックからドレスアーマーを取り出して見せる。舞のテンションが爆上がりしているのだが・・・
「うわぁ、お兄ちゃん、早く着て見せてよ!」
「落ち着け、落ち着け、舞。まだ鑑定の結果も見てないんだからそっちが先だ」
滅多に無い事ではあるが、マイナス効果を持つ物も宝箱から出た前例はあった。俗に呪い装備と呼ばれていて、探索者は当然使わないが好事家のコレクションアイテムとなっているらしい。
「えっと、聖銀のドレスアーマー。魔力を帯びた絹糸で編まれた布とミスリルで作られたドレスアーマー。サイズ調整が付与されている。装備すると全身を魔力で防御し、物理と魔法の両面に高い防御力を発揮する」
「素人目にはかなり良さそうな装備に見えるがどうなんだ?」
「良い物だと思うよ。物理と魔法の両方の対応してるのが凄いね」
魔法の属性に関する記述が無いので全属性に対して効果があるのだと思う。現状では複数属性の耐性なんて宝箱からの防具にしか無いのでかなりの高級品だ。
「使うのは確定として、どの武器に合わせるかな。着せ替え人形の効果で武器を変えると防具も同時に変わるからよく考えないと」
ドレスアーマーは着たままで武器だけ変えられれば最高なのだが、武器を変えればセットにしている防具も変わってしまうのだ。
「スカートの裾が長いから、双剣だと動くのを阻害しそうね」
「とすると大盾か斧槍かだな。大盾と合わせて防御を万全にするか、斧槍での防御を上げておくか・・・」
母さんが言うように双剣に合わせるのは無いな。これを着て素早く動くのはちょっとキツイだろう。大盾か斧槍に合わせるべきだ。
「お兄ちゃん、それはそれとしてまずは着て見せてよ」
「そうね。実際に着てどれくらい動くのに支障があるか試した方が良いわ」
それもそうだ。斧槍は双剣程動かないが全く動かずに扱う訳では無い。斧槍を扱うのに支障があるようなら組み合わせるのは大盾一択となる。
まずは女性体を発動し斧槍装備の着せ替え人形を呼び出し着せていた服をドレスアーマーと入れ替える。そして今身に纏っている双剣と入れ換えた。
「わあっ、お姉ちゃん綺麗!」
「武器が細剣だったら完全に姫騎士ね」
舞と母さんが褒めてくれたが、外見は女性でも精神は歴とした男性なのだ。綺麗と褒められても微妙な気分になってしまう。
「優は自分の姿を見れないだろう。撮影しようか」
「お父さん、私も写る!」
「あら、それじゃあお母さんもお願いしようかしら」
俺が自分の姿を確認する為に写して貰う筈だったが、俺だけで一枚。舞とツーショットで一枚。母さんとツーショットで一枚。家族全員で一枚撮る事になってしまった。
自分の姿の感想については・・・黙秘権を行使させてもらいます。




