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第百六十八話 歴史が変わる時

「女王陛下に申し上げます。国内の複数箇所にて不可思議な物体が発生し、奇妙な動物が大量に出てきています」


「ソールズベリー侯爵、もう少しわかり易く報告なさい。その動物がどうしたというのです?」


 ここは世界に冠たる大英帝国の首都ロンドンにあるバッキンガム宮殿。当代の首相であり侯爵家現当主でもあるロバート・ガスコイン卿は偉大なるヴィクトリア女王陛下に変事の報告を行っていた。


「いきなり妙な渦巻きのような現象が発生し、そこから妙な動物が湧いて人を襲っているとの事です。警官の手に余るらしく、現在陸軍に出動するよう申し付けております」


 英国は山地が低く森林も少ない為ダンジョンを早期に発見する事が出来た。また、本土の国土面積がそう広くなかった為に中国やロシア、アメリカに比べダンジョンの数が少ない事も幸いした。


「報告致します。動物達には銃や大砲が効きません。剣や斧での攻撃は通じるとの事です。しかし動物の量が多過ぎる為、警官隊や陸軍は苦戦しています」


「銃が効かないだと?ここの防備は万全なのだろうな?」


 伝令は黙したまま返事を返さなかった。銃砲が使えない近接攻撃での戦闘となれば射撃での漸減が出来ないため兵力の多寡は重要だ。


 王族を護る近衛は常駐しているものの、その数は決して多くはない。


「マジェスティックを呼べ。いざとなったら王族の方々を乗せて一時避難していただく」


 宰相は就役間近の最新鋭戦艦をやんごとなき方々の避難用に呼ぶ事を決断した。伝令はそれを実行するべく部屋から退出していった。


「一体何が起こっているのか。早急に調査して解決せよ」


 ヴィクトリア女王より出された命令は遂行されなかった。早急に解決しようにも兵力が足りなかったのだ。


 大英帝国は遠いアジアの地に植民地を保有しており、更にアフリカにて戦争を仕掛けている。陸軍は大半がそちらに投入されており、島国英国の防御は海軍海峡艦隊が担っていたのだ。


 圧倒的な量に押された英国市民は城塞都市に逃げ込み防戦に努めた。女王は海外に展開した軍に即時帰還命令を出したがすぐに帰ってこられる訳では無い。


 伝達に出た艦が遠征軍に合流するのが早くて一ヶ月後。撤退の準備をして撤退し、艦に乗って帰還するのに二ヶ月程はかかるだろう。


 しかも、この現象が英国だけの物とは限らない。戦地や植民地でも発生し軍に被害が出ている可能性もあるし、海上にも発生して艦が撃沈される可能性もある。


 何としても本土を守るという義務感に囚われた宰相は、南アイルランドの民に取引を申し出た。モンスターからの防衛に協力すればアイルランド島の独立を認めると持ちかけたのだ。


 当時のアイルランド島は全島が英国領となっており、宗教の問題もあって独立の機運が高まっていたのだ。その為、英国からの申し出は悪い話ではなかった。


 発生したダンジョンが英国より少なく被害が殆ど無かったアイルランドはその提案に乗り英国防衛に力を貸した。


 それにより稼いだ時間は貴重な物となり、英国はアジア・アフリカ派遣軍が帰還するまで持ち堪えモンスターの駆逐に成功する事となる。


 その後、ヨーロッパ各国より救援要請を受けた英国は欧州各地に軍を派遣。甚大な被害を受けた各国は単独で国家運営するのが厳しくなり欧州連合として合併するのだが、英国は主催国として君臨する事となる。


 しかしアイルランドとの約束を「北部アイルランドの民は英国所属を望んでいる」として反故にしたため南アイルランドとの対立が激化してしまった。


 その対立は現在でもアイルランド独立戦線という名の組織による武力行使として続くのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 安定のブリカス……
[一言] おお、違う歴史を歩んだはずなのに同じような結末に収斂してしまった パラレルワールドもの、あるあるですね
[一言] ブリカス安定の二枚舌で安心した お前らはそうでないとなwww さすが場合によっては舌が三枚に増える奴らだ面構えが違う イギリス本土は島国で国土も広くはないから日本のように生き残ってそうとは…
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