表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/671

第百六十七話 とある工作員の奮闘

ちょっとながくなりました(汗)

 時は一月に遡る。大人が中学生に大勢で襲い掛かり返り討ちにされたという事件が正月早々発生した。その被害者と家族は所轄警察で事情聴取を受けた。


「ねえ、対応がおかしくない?」


「何でも加害者が軍の人間らしいわよ。でも変ね、それなら軍がしゃしゃり出て揉み消しても良さそうな物なのに」


 丁寧な対応を受ける滝本家を見た婦警がヒソヒソと話す。話しに夢中の二人は近くで聞いていた別の婦警に気付かなかった。


 その婦警は自分のデスクに戻るとパソコンのキーボードを叩く。


「ふうん、滝本優ね。ダンジョン犯罪特集でTHKに出たと。スキルは・・・随分巫山戯たスキルね、よく探索者やってられるわ」


 彼女は軍のデータベースに侵入し優の個人情報を閲覧する。これは警察官といえども許される行為ではない。


「調べてみたいけど今は動かない方が良さそうね。使えそうなら教育(洗脳)して国の役に立たせましょう」


 この婦警は日本人ではなかった。中国から密入国を果たし、日本人として生活していたのだ。


 そして二ヶ月と少し経ち、優の近辺を探っていた彼女は学校とトラブルが起きた事を知った。そして氾濫が発生する。


 軍の耳目が板橋に集まっている今がチャンス。そう判断した婦警は行動に出る。予め調べておいた優がスキル登録をした役所へと向かった。


「すいません、上尾署の芹澤です。昨年滝本優君のスキル登録に立ち会った方にお話をお聞きしたいのですが」


「少々お待ち下さい・・・すぐにお呼びします」


 芹澤が提示した警察手帳は本物であり、対応した役人は疑う事なく当時の担当者を呼び出した。


「お忙しい所を申し訳ありません、上尾署の芹澤と申します。去年スキル登録を行った滝本優君についておききしたいと思いまして」


「ああ、あの変わったスキルの子ですか。可愛い男の娘だった上に独特なスキルでしたのでよく覚えていますよ」


「一月に彼が襲われた事はご存知でしょうか。その件で彼は学校とトラブルを起こしまして、改めて調べさせてもらっています」


 担当者も一月の事件は聞いていた。なので芹澤の言葉を完全に信用し、当時の様子を思い出せる範囲で話していった。


「他にはありませんか?どんなに些細な事でも思い出していただきたいのですが」


「話せる事なんて・・・そうそう、着せ替え人形というスキルに自動洗浄と自動修復が付いてるとか言ってたわね。洗濯要らずで羨ましいと思ったのよ」


 担当者の言葉に芹澤が反応した。その二つの事柄はデータに記載されていなかった。故意に隠しているとしたら何か秘密があるのかもしれない。


「それはデータに登録されていない内容ですね」


「着せ替え人形と女性体がインパクト強すぎて、書くの忘れちゃったのよ。汚れが取れるだけだし大した事無いから構わないでしょ」


 芹澤は担当者の言葉に軽く落胆した。隠された秘密があり有用ならば祖国に貢献出来ると思ったのに期待が外れたからだ。


「長い時間ありがとうございました。これで失礼します」


 芹澤は役所を出て停めたパトカーに戻る。祖国は上海や重慶、北京といった都市を拠点にする軍閥が帝位を狙って争っている。


 有能なスキル持ちを連れて戻れば故郷である成都が有利になれる。何としても日本から有能な人材を教育して連れ帰らねばと焦っていた。


「はぁ・・・板橋で活躍したっていう獣人を連れて帰れれば最高だけどなぁ。女じゃハニトラも効かないし」


「どこに連れて行こうというのだね、工作員君」


 芹澤が停めていたパトカーの前にはスーツを着た男が立ち塞がっていた。


「あんた、情報部の・・・」


「警察からハッキングすれば警察組織の行動とみられると思ったか?我々も甘くみられたものだ」


 ハッキングされた軍は、当初は軍を快く思わない警察という組織の行動かと疑った。しかし、内偵を進めると芹澤の行動に不審な点を見つけたのだった。


「おっと、逃さんよ。どこの手の者か喋って貰わんといかんからな」


 逃げ出そうと踵を返した芹澤に接近し、腹に拳を打ち込む関中佐。芹澤は呆気なく気絶し倒れ込んだ。


「他国もそろそろ外を見る余裕が出てきたか。仕事が増えそうだなぁ」


 周囲を固めていた部下に芹澤を渡した関中佐は空を見上げて呟くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
しれっと男の娘呼ばわりしている担当役人に言及は無いようだ・・・
[良い点] この世界の日本はこっちの日本と違ってスパイ天国とは呼ばれてなさそう。
[一言] やれやれ、リアルでも創作でも志那カスは日本に迷惑しかかけない腐れ肉袋やな(クソデカため息
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ