第百六十五話
優のままでも彗星鶏を倒す事は出来たものの、やはり精神的な消耗が激しい。対応出来る早さではあるが気を抜いたら攻撃を食らってしまいそうだ。
現実ではゲームのようにHPが減るだけでは済まない。足を負傷すれば動きが遅くなり更なる負傷を負う事になる。
時間も昼過ぎとなったので、迷い家に入り少し遅い昼食を食べて休息をとる。母さん特製照り焼きサンドを一気に食べた。
十分に休息をとり狩りを再開する。戦っては休んでを五回繰り返した頃には彗星鶏の速さにも慣れてきて倒すまでの時間は少し短縮出来た。
優で彗星鶏を倒す手応えも掴めたし、時間も遅くなったので今日の狩りはここまでとする。今日の夕食は来る途中に狩ったオークの肉を使った豚カツ定食だ。
ご飯は休憩中に刈って脱穀と精米をした迷い家産のお米を使用。千切りキャベツも迷い家の畑から収獲してきた。
二人分料理し一人分をお社に奉納する。奉納する頻度は低いけど、神様への感謝は忘れていません。
食休みの後風呂に入りそのまま床につく。丁寧にブラッシングした尻尾を抱いて眠りについた。
翌日は玉藻のままで狩りをした。優で彗星鶏との戦いに慣れるという目標は昨日達成したので、今日は次の目標を達成しようと思う。
今日の目標は彗星鶏のレアドロップ集めだ。その為に玉藻の能力をフルに使って狩りまくる。
上空から彗星鶏を見つけて狐火を撃ち込む。回避されて当たらないのだが、それはこちらも織り込み済だ。
続けて狐火を撃ち続けて雄鶏と雌鳥を分断する。連携が取れなくなれば夫婦鶏の脅威度はかなり下がるので倒すのはかなり楽になる。
玉藻の方が速い上に小回りも効くのだ。一対一ならば負ける要素は無いと断言出来る。そして一羽を倒してからもう一羽を倒すのだ。
しかし、負けないからといって消耗が軽いという訳では無い。ドッグファイトを演じている鶏の相方の動きを把握し、狐火を撃ち続けて分断しなければならないからだ。
二回か三回戦って休息する。それを一日繰り返し、十個のレアドロップを確保する事に成功した。もう少し欲しい所だったが、それは贅沢という物だろう。
迷い家でもう一泊して十九階層に別れを告げる。リュックにレアドロップ全てと魔石を三割入れて妖狐化を解く。
最短ルートを辿り、倒さねばならないモンスターだけを倒していく。九階層は砂漠ステージだったので、落とし亀の位置は丸わかりだった。
砂の中にポツンと円形に土の部分があるのだ。不自然な事この上ない。蓋を砂にしたら崩れて落ちるから砂に出来ないのだろう。
かくして問題なくダンジョンを出たのだが、問題はその後やってきた。行き帰りの道中と夫婦鶏狩りで得た魔石を換金しようとしたのだが。
「こ、これ、お一人で得られた魔石ですか?」
「ええ、一日ではなく泊まり込みましたけどね」
夫婦鶏の魔石は三割に抑えたのだが、それでも多かったようだ。受付嬢さんが驚きの目で俺を見ている。
「パーティーではなくソロでこれだけの量を狩ったと仰います?」
「幸いな事にスキルに恵まれまして。その恩恵ですよ」
詳しい戦闘方法を探るのはマナー違反となる。強引に聞き出そうとするなら襲う為に手の内を聞き出そうとしていると疑われても文句は言えない。
「ちょっとお話させて頂きたいので、ギルド長室まで同行をお願いします」
ギルドにしてみれば氾濫騒ぎがあった直後に難敵を大量にソロで狩れる探索者が来たのだ。あわよくば専属にと考えるのが普通だろう。
今後もレアドロップ集めをしたい俺にギルドと揉めるという選択肢はない。受付嬢に促されるままギルド長室の向かうのだった。




