第百六十四話
「おい、あれ見ろよ」
「うわっ、可愛い!」
人目の無い路地で女性体を発動し双剣装備で板橋ギルドに入ったのだが、入った瞬間に注目を集めてしまった。
俺は視線を全て無視して空いている受付に行きカードを提示した。
「すいません、板橋ダンジョンの地図を公開されている物全て欲しいのですが」
「あっ、はい。現在二十四階層までですが全てですか?」
「全てでお願いします。支払いはカードからで」
カードから代金を引き落としてもらい、データをスマホに落とす作業を行う。他に用事はないのでカウンターから離れるが、すぐに二十代後半と思しき男性探索者に声をかけられた。
「お嬢ちゃん初めてみたいだな。俺たちが一緒に潜ってやるからこっちに来いよ」
「お断りします。私は誰かと一緒に潜るつもりはありませんので」
大きめの声で返答し、こいつら以外でも誰とも潜らないと周囲の奴らにも聞かせてやった。
「俺達は十階層も行ける凄腕だぜ、いいから来い!」
「私は十九階層まで行く予定だけど、付いて来れるのかしら?」
私はそれより深く潜ると伝えると、一瞬驚いたような顔をしたが反論してきた。
「嘘は良くないな。一人で十九階層なんて行ける筈がない。断る口実にするならもっと上手い嘘を付くんだな」
「証拠はこれですが?」
俺はステータスカードを出してダンジョンの攻略階層の項目を見せた。
「に、二十一階層だとっ!嘘だ、嘘に決まってる!」
「ステータスカードで誤魔化す事は不可能。そんなの十六歳以上なら誰でも知っている筈でしょう?」
二十階層越えを達成しているという事実にナンパ野郎や他の探索者が驚き放心している内にその場を離れる。
幸い追ってくる探索者は居なかったので問題なくダンジョンに入る事が出来た。尚、建屋の大穴は綺麗に塞がれていた。
スマホで最短ルートを確認しながら進んでいく。十九階層までのモンスターは無視して進む・・・と言いたい所だが途中で寄り道をした。
十階層でオークを倒して回り、オーク肉の補充を行った。人目の無い所で玉藻となり迷い家に放り込んで置く。
女性体に戻り先に進む。ゴーレムも斧槍のお陰で時間をかける事なく突破する事が出来た。
そして問題の十九階層。草原ステージで彗星鶏を探して歩く。見晴らしが良い上に体色が赤なのでそう時間をかけずに見付ける事が出来た。
「クワァァァッ!」
突撃してきた雄鶏を大盾で右に流して左にステップを踏む。同時に双剣に換装して真横を通り過ぎる雌鶏の首筋に斬撃をお見舞いした。
当てる事は出来たが、一撃で撃破とはいかなかった。斧槍の一撃なら終わっていたと思うが、相手が速いので当てられるかどうか。
時間差が効かなかったとみた彗星鶏は雄鶏が正面から、雌鶏が右方から同時に突撃してきた。俺は雌鳥を無視して雄鶏に向かい走る。
置いてけぼりを食らった雌鳥は軌道修正して俺を追うが、飛び上がり胸に飛び蹴りを加えようとした雄鶏を右に躱すと衝突する形となった。
面食らった雌鳥は慌てて左に方向転換する。その間に俺は斧槍に換装し、伸ばした斧槍は後ろから雄鶏を貫いた。
相方を倒されて怒った雌鳥が地を這うような低姿勢から襲ってきた。しかし大盾に換装し上から押し潰すように盾を被せる。
速さが売りの彗星鶏が押さえ付けられたら勝ち目はない。反撃も出来ずに一方的に攻撃され魔石へと変わっていった。




