第百三十一話
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松が明けた四日、滝本医院には多くの人が訪れていた。診察を望む患者さんが多かった訳ではなく、二日の事件を聞き心配になった人達が来てくれたのだ。
警察や軍が報道を抑えた所で人の口に戸は立てられない。噂は広がるし現代にはSNSという物もある。少なくともうちや本家の近辺には広まったようだ。
特に人質にされかけた舞と戦闘を行った俺への心配する声が多かった為、俺と舞も医院の待合室に出て怪我もなく乗り切った事を報告していった。
「昨日は凄い人だったね、お兄ちゃん」
「そうだな、あれだけ多くの人達が俺達の事を心配してくれた。有難い事だよ」
とはいえ対応に体力と精神力を消費した事は否めない。翌日の五日は毎日のルーチンを終わらせたら一日趣味に没頭するつもりだ。
「今日は冬休み最後の日だが、舞は遊びに行かないのか?」
「昨日で結構疲れたから、お兄ちゃんの作業見てノンビリするわ」
正面に座る舞と会話しながらも、俺の手は止まらない。木材にノミを当て、木槌で叩いて彫り進める。
「それで、今日彫っているのはどんな仏様?」
「今日は薬師如来坐像だ。病気を治す仏様だな」
昨日疲弊した精神を癒やしたいとの思いから選択しました。阿弥陀如来様と迷ったのだが、今回は薬師如来様を選択。
「癒やしの仏様だから、うちにピッタリだしな」
「本当に、お兄ちゃんはどこに向かってるのよ。待合室に安置した奴、買いたいって人が複数来たらしいわよ」
多少良く出来ていても、所詮は素人の手彫り。そんな酔狂な人が居るとは驚きだ。
そんなこんなで趣味に時間を使い、心身共にリフレッシュした俺は六日の始業式に出席した。登校中普段より視線を多く感じたのは例の事件の影響だろう。
それでも誰かに話しかけられる事もなく学校に到着。支援学級は俺一人なので気が楽だ。
先生と挨拶を交わし、始業式に出る。校長先生の話が長い上にループするのは仕様で決められているのだろうか。
「滝本君、二日の日に事件に巻き込まれたというのは本当かしら?」
「巻き込まれたと言うか、当事者ですね。複数の大人に襲われて反撃しましたよ」
学校外で起きた事件とはいえ、生徒が関わった事件を学校側が知らないで通す訳にはいかない。だから事情を聞かれる位はあるだろうと思っていた。
その予想は外れる事はなく、職員室に連れて行かれ全教師の前で事件の経緯を説明させられた。
「スキルを得ているとはいえ、中学生に集団で襲いかかるとは・・・」
「しかも小学生を人質に取ろうとし、守ろうとした親御さんに鎌で斬りつけるなんて!」
あらましを聞いた教師達からは本家の連中を非難する意見が噴出した。しかし、ある一人の教師の言葉で空気が変わる。
「ですが、滝本が余計な挑発をしなければ何事も無かったのでは?」
「それは・・・確かに。相手を侮辱したから模擬戦などという話になったのだ」
それを言い出したのは、スキルの報告の時に懸念を言い出した教師だった。俺に個人的な恨みでもあるのだろうか。
「俺に非があると言うのなら、処罰でも何でもしていただいて結構です。俺は家族を侮辱した奴らを許せないし、戦った事も後悔していませんから」
そう言い放ち職員室から退室する。確かに相手の挑発に乗り挑発仕返した。それをしなければあんな事にはならなかっただろう。
だが、父さんを侮辱されたままにはしたくなかったしその後についても悔いていない。処罰でも何でも好きにすればいい。




