第十二話
昼食をとった後、俺は味方の援護を望めない孤立無援の戦いに身を投じる事となった。勝てない戦いではあるが、避けて通る事は出来ない戦いだった。
「身を屈めてトップの位置を合わせたらホックを填めて、その後周囲のお肉をカップに寄せて・・・」
「大きくなるとこんな風に付けるのね」
「舞ちゃんはまだ必要ないけれど、いずれ必要になるから覚えておくのよ」
俺の部屋では母さんを講師としたランジェリー付け方講座が開催されている。俺にランジェリーの付け方を教えると同時に、まだ子供用ブラを付けている舞にも普通のブラの付け方を教えるというイベントだ。
「私も二年後にはこのサイズになるかなぁ」
「優ちゃんは歳の割に大きいから、ここまではならないと思うわ。でも、舞ちゃんも大きくなるから心配要らないわよ」
「そうね、お母さんとお姉ちゃんが大きいのだから私も大きくなるわよね」
などと赤裸々な会話を目の前でされては、男子中学生としては反応に困る。しかし逃げ出す訳にもいかず、ただ耐えるしか無いというのが現状だ。
「次は洋服ね。まずは白のワンピースで・・・」
その後は色々な種類の洋服を次々と着せ替えさせられた。服のタイプやデザインで身体のどこに合わせて着こなすかを延々と実地で教え込まれた。
「・・・女性ってこんなに大変なのか。女性体のスキルは封印しよう」
「優ちゃんはまだ中学生だから要らないけど、これに化粧も必要になるのよ。女性の美しさは相応の努力で維持されていると覚えておきなさい」
夕方には精魂尽き果てて立つのも億劫だった。母さんと舞は夕御飯の支度の為に台所へと移動している。
着替えの時に初めて女性体を鏡で見たが、確かに可愛いかった。整った顔立ちに胸が大きめだが整ったプロポーション。人が多い場所に行ったらナンパされる確率はかなり高いだろう。
「優ちゃん、ご飯よ!」
「すぐ行きます」
母さんに呼ばれて食卓につく。そんな俺の姿を見て父さんが息を飲んだ。
「それが優の女性体か、凄く可愛いな。制服がよく似合ってるぞ」
「ありがとう、と言うべきかな。母さん、父さんにも見せたし戻っても良いかな?」
「ダメよ、慣れる為に寝るまでそのままで居なさい。女性体で学校に行く事もあるかもしれないのよ」
俺がうちの中学校の制服を着ている理由がそれだ。可能性としては無いとは断言出来ないので断れなかった。自動で浄化されるので、汚したくないという言い訳も使えない。
「・・・ごちそうさまでした」
いつもと同じ量のご飯だったにも拘わらず、食べ過ぎで苦しくなってしまった。どうやら女性体になった事で胃のサイズも変わっているらしい。
「ふむ、言われてみれば内臓も変化していると考えるのが妥当か。となると一度精密検査を受けた方が良いな」
あまり考えたくはないが、生殖機能も女性の物に置き換わっているのだろう。父さんが言う通りゴールデンウィークがあけたら検査を受けるべきだろう。




