第百十四話
作者「読者様よりヘラクレス症候群についてのご指摘が!」
優「どれどれ・・・うわっ、筋繊維か肥大化して硬直したりするんだ。強くなるどころか弱くなる!」
作者「という訳で実際は真逆の効果なのですが、この物語では強化される物として進めていきたいと思います」
素戔嗚様にお会いするというトンデモ過ぎる出来事から一ヶ月ちょい。期末テストの主要科目を全て学年一位という満足できる成績で乗り越える事が出来た。
前世ならば年末前の大イベント、クリスマスで街は盛り上がる時期だ。しかしこの世界では欧米がダンジョン発生被害からの復興の終盤、或いは終えたばかりな為そういったイベントは日本には普及していない。
それでも年末年始に向けた売り込みはあるので、商店街は活気づいている。そんな中俺は肉類の補充と武器の物色をする為大宮のダンジョンに訪れている。
狙うのは十一階層の突撃牛の肉だ。夫婦鶏は迷い家にストックがあるので、それを使う予定である。
夫婦鶏狩りは玉藻になり空から狙撃すればサクサク行えるのだが、得た肉を全て持ち帰るのは多すぎて怪しまれる。
なので迷い家に保管し必要に応じて出すというやり方で調整を行っているのだ。肉集めを名目に別の行動をする時のアリバイにもなって一石二鳥だ。二羽一組の鶏だけに。
・・・何故か周囲の気温が下がったような気がするが気の所為という事にしておこう。
牛さん狩りは特筆する事もなく順調に予定数を確保する事が出来た。魔石の売上も上々で、貯めた金額は軽く三桁万円を越えた。
武器を見る為に販売コーナーに向かうと、何やらトラブルが発生しているようだった。怒鳴り声を上げる男性を店員が宥めている。
「おかしいだろ、緋緋色金の武器だぞ。特殊効果まで付いている。なのに何でそんな金額なんだよ!」
「だから、買い手がつかない可能性が高いんですよ。効果は良くても制限が・・・」
どうやら男性が武器を買い取りに出したが査定額が低かったようだ。緋緋色金で特殊効果付きとなればかなりの高額になると思うが、幾らと告げられたのやら。
「兎に角、うちで提示できる金額はこれです。ご不満ならば他のお店に行く事をお勧めしますよ」
「他でも同程度だったんだよ!頼む、年末までに纏まった金が必要なんだ!」
他店でも似たような査定だったのならば、この店が不当に安く見積もったという訳では無さそうだ。緋緋色金製武器でありながら買い叩かれる武器とはどんな物なのか、俄然興味が湧いてきた。
「随分騒々しいですが、どうしたんですか?」
「ああ、お騒がせしてすいません。このお客さんがしつこくて・・・」
店員さんが頭を下げて謝罪し、男性は割り込んできた俺を睨みつける。俺は二人よりもカウンターに置かれた武器に注目した。
「これは変わった形の手斧ですね。でもバランス悪くないですか?」
その武器は一見手斧に近い形をしていた。しかし斧の部分が不自然に大きくて柄の長さに比べたらバランスが悪い。
更に先端には槍の穂先が付いていて、斧の反対側には鋭い鈎がついている。これは手斧と言うより柄が極端に短い斧槍と言うのが正解だろう。
「これは手斧ではなく斧槍だよ。使い手の意志で柄の長さを変えられる特殊効果付きのな」
「それで柄が短いのか。持ち運ぶ時は邪魔にならないよう短くしておき、使う時は必要な長さに伸ばすと」
男性の説明に得心がいった。随分と便利な機能だし、硬度の高い緋緋色金製。それが買い叩かれるってどんな制約が付いているんだ?
「便利は便利ですけどね。制約が致命的なんですよ。その機能、使うには条件があるんです」
店員さんは深いため息をつき、男性は苦虫を噛み潰したような顔をした。かなり酷い条件なのだろう。




